あらすじ
本書は、広報一筋35年、様々な経営者に仕え修羅場も経験してきた著者が、「経営広報」という独自の考え方を整理し提示するもの。リアリティに溢れた実践的内容で、広報関係者、経営者・経営幹部にもぜひご一読いただきたい一冊。
本来、広報は経営者の仕事だ。広報担当が経営者と協働してそれを担うために、まずは「広報=メディア対応」という固定観念をいったん外す。そして、(1)経営者に寄り添い、(2)言葉にならぬ経営者の意思をつかみ、(3)それを言語化し、(4)ときには覚悟を引き出し、(5)ストーリーに仕上げ、(6)それを必要な各機能に接続し、(7)アウトプットの全体統制を図るという、7つの手順からなる「経営広報」を実践すべきだ。
【4つの特徴】
1.昭和から令和までの広報機能の変遷
35年間、広報の最前線で3つの時代を駆け抜けた著者だから書ける、時代を彩る広報機能の変遷と、そこから見出した“ドーナツ化現象”という問題意識を提起。
2.経営者とのリアルなせめぎあい
著者が広報責任者を務めてきたリクルートコスモス、CCC、GDO、ベルシステム24、ADワークスグループ(現職)、それぞれの個性的な経営者とのリアルなせめぎあいが満載。
3.7つの手順と35のベスト・プラクティス
著者独自の広報論を「経営広報」として展開するにあたり、上記「7つの手順」ごとに各5つ、計35の実践的な秘訣を「ベスト・プラクティス」として披露。他に類を見ない実践的かつ体系的な指針。
4.中島茂弁護士との対談
中島経営法律事務所代表の中島茂弁護士との対談を掲載、「経営広報」という考え方の強力なバックボーンとして、高次元の経営論・広報論を展開。
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Posted by ブクログ
本書は、企業広報の仕事が多岐にわたる現代において、その本質が忘れ去られているのではないかという問題意識から出発しています。著者は、広報機能が細分化され、テクニックやノウハウ(How To)ばかりが先行している現状に警鐘を鳴らし、広報の中心に据えるべき最も重要な要素として「経営者の想いや覚悟」を提示しています。
### 広報の本質と経営広報
従来の広報は、メディアとの関係構築や記事の獲得が主な業務でした。しかし、著者は広報の役割を「商品やサービス」から「企業そのもの」を伝える時代へと変化したと指摘し、その軸となるのが**経営者の想いや覚悟**であると主張します。これを著者は「**経営広報**」と定義しています。経営広報は、単に経営者の考えを伝えるだけでなく、経営者のパートナーとして、その意思を言語化し、リアルタイムで企業のストーリーを描いていく役割を担います。
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### 広報の役割と価値の言語化
著者は、広報の仕事は「記事をタダで出すこと」ではないと断言します。記事の掲載を目的とする短絡的な発想は、広報本来の価値を見失うことにつながります。広報の真価は、経営者のビジョンや企業の活動を**言語化**し、ステークホルダーに伝えることにあります。著者の持論として「広報が扱う情報は3度言語化される」というものがあります。
1. **一度目の言語化**: 広報が企業の価値をニュースリリースとして言語化する。
2. **二度目の言語化**: 記者が取材を通じて記事として再言語化する。
3. **三度目の言語化**: 記事を読んだ読者や消費者が口コミとして再々言語化する。
経営広報は、この再々言語化までコミットする意識で情報を取り扱うべきだと著者は述べています。そのためには、社内用語を分かりやすく翻訳し、情報を端的な単語で表現する工夫が必要です。
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### 経営者と広報の関係性
経営広報は、経営者と一体不可分な関係にあります。著者は、広報を組織や体制として捉えるのではなく、「**Do**(行動)」であると表現し、経営者が経営を続ける限り、広報も行動し続けるべきだと説きます。経営者の言葉の裏にある「氷山」を見抜き、水面下の想いを理解するためには、経営者から離れず、その言葉に耳を傾ける「深海に潜る勇気」が必要です。経営者が持つ強いビジョンを形にし、事業の未来を見せるための投資をすることで、メディアが自然と取り上げたくなるような**磁力を持つコンテンツ**が生まれるのです。
著者は、経営広報は経営者の〝演じる〟ための脚本家、演出家、振付役であると表現し、経営者の本質を引き出し、それを社会に伝えていくことが広報の重要な役割であると締めくくっています。