あらすじ
哲学と精神分析の根源には「恋」があった。これを僕らはどうすればいいのか。
人生で初めて一気読みしてしまったラカンの本。
――東畑開人氏・推薦
ラカンにとって哲学とはいったい何だったのか?
そしてラカンは哲学に何をもたらしたのか?
デカルト、ヘーゲル、カント、そしてソクラテス。
哲学と精神分析の交点に立ち上がる、誰も見たことのないジャック・ラカン。
私たちがこれから目撃しようとしているのは、「反哲学」をぶちあげる以前に、ソクラテスやデカルトをはじめとした第一級の哲学者たちと対決し、格闘することで、精神分析を再創造しようとしたラカンである。(本文より)
【目次】
■まえがき
第1部 デカルトを読むラカン
■第1章 哲学は狂気をどう考えるか――ラカンの「デカルトへの回帰」
■第2章 失われた現実を求めて――フロイトと精神の考古学
■第3章 疑わしさの向こう側――デカルト的経験としての無意識
■第4章 哲学者の夢――コギトの裏面、欺く神の仮説
■第5章 言葉と欲望――フーコー/デリダ論争の傍らで
■第6章 科学にとって神とは何者か――精神分析の始まりと終わり
第2部 精神分析的現実のほうへ
■第7章 恋愛は存在しない?――「転移性恋愛についての見解」再読
■第8章 道徳か情欲か――カントともうひとつのアンチノミー
■第9章 目覚めるとはどういうことか――現実の再定義としての夢解釈
■第10章 狼の夢の秘密――トラウマとしての現実界(1)
■第11章 フロイトという症例――トラウマとしての現実界(2)
■第12章 ヘーゲルに抗するラカン――精神分析的時間の発明
第3部 ソクラテスの欲望をめぐって
■第13章 起源の誘惑――フロイトとソクラテス
■第14章 愛とメタファー――少年愛から神々のほうへ
■第15章 永遠の愛の裏面――止まらないしゃっくりの謎
■第16章 あなたは愛を知らない――分裂するソクラテス
■第17章 とり憑かれた哲学者――美のイデアと死の欲望
■第18章 物語の外に出る――精神分析家の欲望とは何か
■結びに代えて
■あとがき
■注
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Posted by ブクログ
面白い本だった。
ラカンが中心にいるのは間違いないけど、ラカン自体はそれこそ分析家として聞き役に徹していて、主体は召喚されてくる哲学者達という感じの構成。
プラトンの饗宴を読む3章が特に好きで、自分が一度読んだ時は各人の演説内容に気を取られてしまっていたけど、ラカンの読みを通すと、アリストファネスのくしゃみとか、パイドロスやパウサニアスが普遍的な愛を語るようでいて、今自分が投じているこの愛の擁護をしているとか、演説内容以外のレイヤーもかなり緻密に構成されていたことがわかって面白かった。
ソクラテス=ディオティマの演説の後に、アルキビアデスの乱入が加えられることの必然性も何となくわかった。ソクラテスは美のイデアへと導く存在ではなく、謎なのであり、そのことによって支配的な物語をアルキビアデスに与えるのではなく、物語から目覚めることを教える。
欲望は際限がなく、ゴールとしての現実の対象がない。無知と知の間で絶えず知を求め、その過程で子をなすことが、愛だというなら、自分が幻想として欲望のゴールになることも許されない。
独立した自我理想を持つことは、究極的な美のイデアが現実化することはないという認識に至ることで、可能になるのではないか。