【感想・ネタバレ】古オタクの恋わずらい(1)のレビュー

あらすじ

時は1995年。アニメや漫画が大好きな佐東恵は周囲から孤立しないよう、
転入先の高校では、己の本性を隠して生きることを決意する。
一目ぼれした「委員長」にだけは自分を知ってほしいと願うものの、
彼は大のオタク嫌いで…。
『エヴァ』『スラダン』『ガンダムW』…アニメとマンガが最高に熱かった時代の物語!!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 かつてオタクへの偏見が今以上に激しかった時代の、そんな時代のオタク女子の恋愛をつづったシリーズ1巻である。

 時は遡ること四半世紀ほど前の1995年が舞台だ。
 幽遊白書、ドラゴンボール、スラムダンク、エヴァ、セーラームーンといった今となっては伝説的なコンテンツが現役(または引退後すぐ)だった時代の事。
 主人公は現在の生活を過ごしつつ、かつての学生時代を思い出す――といった構成で、かつての物語が紡がれている。

 オタバレを過剰なまでに恐れる少女・佐東恵は転校を機に隠れオタクを決意。
 一目惚れした委員長を前にオタクを隠しつつ、しかし捨てきれず……といった具合に恋愛を軸に物語は展開している。

 オタク嫌いを公言する委員長・梶正宗。
 まっとうにオタクを差別するバスケ部(※梶が所属)のマネージャー・一華。
 この時代にオープンオタクを貫く剛の者である同級生・大河内道子。
 オタク仲間な文通相手の唯ちゃん、こと鴉森糸吉。

 主要な登場人物だけでもすでにやや多めで、恋愛模様、そしてオタクの在り方を描く物語は、この一巻では行先が見定めづらい。
 主軸となる学校生活の描写は豊富であり、またコミケ参加は確定している。
 その辺がどう転んでいくかは次巻に譲る形だろう。

 この作品はだいぶニッチと言っていい。
 メインターゲットは作者さんの同年代、実際に体験したアラフォー世代のオタク女性に違いない。
 現代の、オタクが認められている現状の信じられなさ。
 雑誌経由で生まれる文通というかつての文化。
 オタクバッシングへの反発と諦観。
 それでもオタク道を捨てきれない業の深さ。
 各種の懐かしいネタを挟みながら、そこでカジュアルに描かれているものは積年の怨念に近い物がある。
 そうした思いを抱えて1995年という時期を過ごした人には、刺さり過ぎる嫌いのある作品である。

 人を選ぶという視点で、ここでは☆四つ半相当と評価している。
 ただ、この作品はおそらく、刺さる人にはえげつなく刺さるだろう。

 世代が違う若きオタクにとっては、今は懐かしきレトロな風景を覗ける楽しい作品だと思う。
 インターネットも携帯も(スマホはおろかガラケーでさえも)普及していない時代のオタクを垣間見るのは、きっと未知との遭遇になるに違いない。

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2022年08月11日

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