【感想・ネタバレ】【新装版】日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのかのレビュー

あらすじ

国際社会を動かす
宗教の「根本原理」を解き明かす!
〝現代人必須の第一級の解説書″

アメリカのアフガニスタン撤退、中国のウイグル弾圧などから、再び宗教戦争に突入する世界。
しかし、日本人は他国の宗教に疎く、その原理や教義の本当の意味を知らない。だから世界情勢を読みきれないのである。
稀代の碩学がキリスト教、イスラム教、仏教の真理を読み解いた名著が、いま装いも新たに蘇る。
宗教を知ると、世界のしくみが見えてくる!

【目次】
第1章 宗教は恐ろしいものと知れ
第2章 宗教のアウトラインを知る
第3章 神の命令のみに生きる【キリスト教】
第4章 【仏教】は近代科学の先駆けだった
第5章 【イスラム教】は絶好の宗教の手本
第6章 日本に遺された【儒教】の負の遺産
第7章 日本人と宗教

「教科書」では語られない
知の巨人・小室直樹だから書けた
驚きの宗教の世界!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

もともとは2000年に発刊された書籍で、2021年に新装版として再刊されたものです。
400ページほどの割合分量多めの本ですが、一気に読み進み、いかに自分が宗教に無知であったかということを思い知らされることに。
宗教とは、氏の著作に頻繁に登場するキーワードでもある「エトス」(行動様式)であり、この定義づけを行ったのはかのマックス・ヴェーバーだそうです。
本書では、世界三大宗教であるキリスト教、仏教、イスラム教、加えて、あまり宗教としては理解されていない儒教、そして日本人と宗教の関わり方について論じられており、宗教に寛容(というか無知)な日本人には驚くべき事実が多いかもしれません。
以下、備忘も兼ねた、本書による目からウロコの数々と自分自身の理解です。

○宗教には啓典宗教とそれ以外の宗教とがある。
・啓典宗教…ユダヤ教(トーラー)、キリスト教(福音書)、イスラム教(コーラン)
・それ以外…仏教など
○啓典とは最高教典のことであり、絶対的なものである。(イスラム教が分かりやすい)
○キリスト教では永遠の死は最大の罰だが、仏教では最大の祝福(救済)である。(悟りを開いて涅槃に入るから)
○イスラム教は、宗教の戒律、社会の規範、国家の法律の三つが一致する。宗教を理解するには絶好の手本である。(他に一致するのはユダヤ教)
○キリスト教では、信仰のみにより救われる。方法も様式もなく、ただ信じるだけでいい。(戒律などは後世に修道院や教会が決めたもの)
○宗教改革は、このキリスト教の本来の姿に原点回帰しようとするもの(改革の名にとらわれ、全く逆の理解をしてた…)
○十字軍の例のように、キリスト教ほど異教徒に対し残酷な宗教はないが、近代国際法や資本主義を生んだのもキリスト教の精神(行動的禁欲)による。
○キリスト教とイスラム教では偶像崇拝は禁忌。なので、隠れキリシタンは踏絵も堂々と踏めば良かった。(信仰心がありさえすれば良いので)
○歴史上、イスラム教化した国が仏教化した事例はないが、その逆の例は非常に多い。
○イスラム教では、トーラーや福音書も聖典として認めている。ただ、それらの正しい解釈はコーランによるものとされている。
○よく誤解されるが、イスラム教は他の宗教にも寛大である。
○イスラム教は精緻であるにもかかわらず、近代国家を作れなかったのは、マホメットが最後の預言者であったゆえ、新しい伝統を作れなかったから。
○儒教は、政治を良くして民を救うという集団救済の宗教であり、高級官僚を作るための教養を与える宗教。行動様式こそが宗教と考えるなら、儒教は間違いなく宗教である。
○隋の時代に始まった科挙は、中世のヨーロッパ諸国では大いにもてはやされた。当時のヨーロッパでは、高級官僚は貴族に限られていたので。
○日本に遺された最も大きな儒教の爪痕(弊害)は、官僚制度と受験制度。
○仏教も儒教も、日本に入ってくると様々な規範や戒律が取り払われ、「日本教」とでもいうべきものになってしまった。
○インチキ宗教を見分けるポイント→金儲け宗教はインチキ、奇蹟をひけらかす宗教はインチキ

少し時間を置いて、もう一度読んでみたいと思います。
非常にインパクトのある良書でした。

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2024年09月18日

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