あらすじ
明治三三(一九〇〇)年五月、清帝国では攘夷運動が激化していた。歴史上有名な義和団の乱である。駐在武官として北京に赴任した柴五郎陸軍中佐も否応なく、この内乱に巻き込まれていく。列強各国公使館地区を包囲する数万の敵。迎え撃つ連合軍は僅か五百足らず……。ここに五五日間にわたる、柴たちの地獄の籠城戦が始まった!
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Posted by ブクログ
はるか昔、歴史の授業で習った「義和団事件」。
単語としてしか理解してなかったが、本書を読む事で「義和団事件」が歴史の一コマでなく、生きたドラマとして心の中に刻みつけられた。
だいぶ以前に中公新書で読んで感心した「ある明治人の記録」の主人公柴五郎が、義和団事件の籠城戦の日本人の中心人物であることはすっかり失念していたが、この柴五郎の人物造形がなんともいいのだ。冷静だが熱く、強さと優しさを併せ持ち、本当に男としてかくありたいと感じさせるのだ。
明治期の人間には筋の通った魅力的な人物が多いように感じるのは私だけだろうか。
「ある明治人の記録」は、参考文献の一番最初に挙げられているので、あらためてを読みたいと強く思った。
また、柴を取り巻く男たちにも魅力的な人間が多い。一緒に籠城戦を戦う列強他国も描かれ方は様々だが、日が経つうちに同志としての意識も芽生え始める。
最後のちょっとしたエピソードのパン屋の女主人の挿話まで、なんとも心憎い筆捌きが見事な小説だ。