【感想・ネタバレ】クジラのおなかに入ったらのレビュー

あらすじ

世界には91種のクジラが存在し、内41種を日本で見ることができます。本書では函館を拠点にストランディング調査(打ち上げられたクジラの調査)を行い、専門の調査機関を設立した著者の歩みを、数々の事件や研究の苦労、発見の喜び、恩師や協力者、後輩とのかかわりを通して紹介します。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

クジラのおなかに入ったら

著者:松田純佳(あやか)
発行;2021年12月3日
ナツメ社
*鯨類研究者(北海道大学)、NPO法人ストランディングネットワーク北海道副理事長、1988年京都府生まれ、水産科学博士(北大)

国立科学博物館の海獣学者で筑波大准教授、田島木綿子氏の本は何冊か読み、ストランディングされた鯨を解剖することが、そして標本をつくることがいかに大切かを知っていたが、本書の著者はクジラを解剖して消化器官などからどんな餌が出てくるかという、食性研究の専門家。田島木綿子氏は憧れの存在で、過去に研究の一部を任された時にはとても嬉しかったことなども書かれている。

食性研究といっても、胃袋にあるものを調べる程度ではない。鯨類は複胃であり、その先の消化器官へと進んで形がなくなっている餌もちゃんと調べる。形のあるものについては、例えば、イカなど頭足類にはビーク(クチバシ)があるが、その上顎と下顎(カラストンビ)をすべてチェックし、種同定をしていく。

魚については、なんと耳石を調べて種同定をするという。耳石は成長にともなって成長層ができるので魚の年齢まで調べる。1頭から何百、何千と出てくる魚介類をすべて調べるとのこと。もちろん、数も数えて記録。解剖記録は共有財産だから、いい加減な同定は許されず、徹底的にやるらしい。自分で分からなければ、もっと偉い先生に助けを求める。気の遠くなるような話だが、好きだからやれるようである。

さらに、食べたものは消化吸収し同化していくが、この時に軽い窒素14が先に使われていく。食物連鎖の中で、定時に位置する(食べられる)ものと高次に位置する(食べる)ものとでは安定同位体比に差が生じることになる。それも調べて、食性の推定もする。

鯨類のストランディングは情報がすべてで、いかにその情報をすぐに知らせてもらえるかネットワークをはっておくことが何より重要らしい。著者は北海道のストランディング鯨類の解剖をしてきたが、途中からは本州にも足をのばしはじめ、田島木綿子氏の手伝いもそれで出来たようである。

ストランディングは待ったなし。何時間も車を運転し、可能な大きさなら車で持ち帰り、大きければその場で解剖して持ち帰れるものだけを持ち帰る。卒論のスライド発表2日前にも連絡が入り、発表前日に解剖し、あわててスライドをつくって発表したという。もちろん、船で島へ行くことも。北海道の北端は稚内だが、そこまで車で行き、利尻島に渡って解剖をし、島観光を決め込んでいたのに今度は南端(函館よりは北だが菱形北海道の南端)の様似(さまに)町でストランディングがあったと連絡が入り、ただちにそちらへ急行。そんな有様。連絡を受けてどうしても行けなかったのは1度だけ。ソフトボールを顔面に受けて鼻の骨を折ったときだけ。だが、その時の解剖により、その鯨が新種だったことが分かったという。日本で41番目の新種に登録されてしまったらしい。

なお、世界には91種類の鯨類が確認されていて、その内、日本では41種類が確認されている。クジラの宝庫だといえる。

なお、クジラとイルカは別の生き物だと思いがちだが、単に大きさの違いだけであり、人間がそう呼び分けているだけ。シャチも含まれる。でも、イルカにはクチバシがあるのでは?と思いがちだが、スナメリやネズミイルカなどないイルカもいる。英語では、クチバシがあるイルカをdolphin(ドルフィン)、ないものをporpoise(ポーパス)と呼んでいるとのこと。

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大体2メートルぐらいの体長の固体なら、回収して大学で調査。それ以上だと基本的には現場での調査となる。

ヒゲ鯨の仲間の場合は噴気孔が我々の鼻の孔と同じように二つあるので噴気は2本上がる。

北大の札幌キャンパスの大きさは東京ドーム約38個分。小川が流れ、ジンギスカンパーティーを行う場所もある。自転車がないと授業に遅刻する。焦ってメインストリートを激チャ(激走チャリンコ)する姿は北大あるあるの一つ。

クジラの胃は複数あるが、牛のように反芻しているわけではなさそう。なぜ複胃なのかは分からない。
多くのハクジラの胃は、前胃、主胃、CC(コネクティングチャンバー)、幽門胃、十二指腸膨大部に分けることができる。前胃の胃壁には消化腺はない。

著者の推しビークは、ヤツデイカとウロコイカ。ヤツデイカのは見る向きのよってイルカが海面から顔を出しているように見えるのがかわいい。ウロコイカのビークは、初めて見たときにあまりにかっこよくてドキドキした。いじわるそうな顔みたいに見えた。

ストランディングされたクジラには、クマも近づく。解剖前に先を越されることもある。石狩の砂浜でオウギハクジラの調査をしたとき、行きの砂浜にはなかったクマの足跡が、帰りの時にはあってぞっとした。

シャチの調査を行ったときには、胃内容物から大量の鳥の羽が出てきて四苦八苦した。魚やイカは平気なのに、アザラシや鳥が餌として出てくるのを実際に見ると、なかなかショック。

胃内容物分析と安定同位体比分析の結果から、スジイルカたちはいつも同じメンバーで行動しているわけではなく、ときと場合によって集まったり離れたりする特徴を持っていることが考えられた。反対にカズハゴンドウたちは、グループで同じ餌を利用していることから、群は固定メンバーで構成されているのではないか。

現存する最大の動物はシロナガスクジラ。2018年8月5日、鎌倉の由比ヶ浜に漂着。著者は現地へ。体長10メートルほどで、まだ母乳を飲んでいた赤ちゃんだった可能性が高い。近くには母クジラがいるかも。

2020年12月、羅臼へ。ツチクジラ2頭が打ち上がった。2頭目、1074.2センチ、体重13.5トン。いつものように60センチの大包丁で切り開き、中へ入っていく。胃を引っ張り出すと、165センチの身長の著者はすっぽり中に入ってしまうほどだった。支給もとても大きく、大人が寝転んでも余裕があるぐらいだった。

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2026年05月02日

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