【感想・ネタバレ】防大女子 - 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち -のレビュー

あらすじ

「究極の男性組織」に身を置いた「防大女子」の生活、人生とは?


防衛大学校の全学生に女子学生が占める割合はわずか12%。
一般の「女子大生」とはまったく違う世界に飛び込んだ彼女たちの生活、苦悩、そして喜びを、自身が「防大女子」だった著者が詳細に描く。
実体験に加え、多くの防大OG、女性自衛官にも取材し、特殊な環境で働く女性たちの本音にせまり、課題を提示する。


【本書の目次より一部抜粋】
「防衛大学校」とはどんな組織か
防大を目指す理由
「中高は文科系」も少なくない防大志望者
テレビなし、腕立て伏せに「これが防大か」
わずか五日で一割退校
防大生の一日
ひたすら匍匐前進の陸、お茶を飲む余裕のある空
「目指すべき学生のあり方」とは
防大生同士の「絆」は固い
男女の友情は成り立つのか
「女子部屋の緊張感が異常」
メンブレ、リスカ、自殺――心が折れるとき
卒業後、自衛官にならなかった防大生
部隊という現実に直面する元防大女子たち
ロールモデルの不在
はびこるハラスメント
防大女子のこれから


【著者プロフィール】
松田小牧 (まつだ・こまき)
1987年、大阪府生まれ。
2007年防衛大学校に入校。人間文化学科で心理学を専攻。
陸上自衛隊幹部候補生学校を中途退校し、2012年、株式会社時事通信社に入社。
社会部、神戸総局を経て、政治部に配属。
2018年、第一子出産を機に退職。
その後はITベンチャーの人事を経て、現在はフリーランスとして執筆活動などを行う。


発行:ワニ・プラス
発売:ワニブックス

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

深い体験談。ご本人、非常に頭がよい。
しかしこのような優秀な方が辞めてしまう自衛隊、それこそが問題だと思う。

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2022年03月09日

Posted by ブクログ

「世の中には三種類の性別がある。男子、女子、防大女子だ」

防衛大出身のフリーランス作家が描く、究極の男社会を生きる防大女子のリアルな姿。

防衛大の女子学生は約1割、そのうち3分の1は卒業前に防大を去るという厳しい世界。卒業後にも中途で退官する例も多いという。筆者もその一人。その後時事通信の記者からフリーランスという経歴。

装丁からはエピソードを羅列した単なる暴露本かと思ったが内容は至って真面目。防衛大と自衛隊における女性の立場がどうあるべきかというテーマに、真摯に立ち向かっている。自衛隊に限らず官民問わず他の社会にも有用な内容、得るところが多い。

防大同期生の深い絆から生まれた本書、志半ばで自殺した同期生の存在が本書の執筆の大きなモチベーションであるという。

防大女子の苦悩と未来を描いた作品。本書が初著作という筆者の今後の活躍を期待したい。文句なしに五つ星。

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2021年12月19日

Posted by ブクログ

本書も「さらばのこの本ダレが書いとんねん!」で紹介されていて、興味深かったので拝読。放送での面白味ほど面白くはなかったが、防衛大学校での女性立ち位置や卒業後の歩みを、数字で解析した結構統計本的なつくり。等身大を把握するというところは参考にはなったが、まあそれだけといえばそれだけ。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「あおざくら 防衛大学校物語」というマンガである程度の防衛大学校の実情を理解していたが、本書は防大女子の視点から2021年に執筆されたもので、とても面白かった。惜しくも満点評価とならなかったのは、第4章で披露される数多のアンケート結果をもう少しわかりやすくまとめれば理解も深まったのでは。
筆者は女性で2007年防大入校、卒業後、陸自幹部候補生学校を中途退校。
防衛大学校に女子が初めて入るのが1992年(39人)、トータル30年間の女性の割合は約10%(近年では2割近くなっている)。女子一期生39名のうち任官(卒業)したのは27名。ちなみに、女子一期生の大谷 三穂(1971年〈昭和46年〉5月28日 - )は海上自衛官で階級は1等海佐で初の女性将官となる。
防大生は公務員なので、学費はかからず、毎月学生手当も支給される。
以下は、章立てのエッセンス。

第一章 防大女子はどこから来るのか
アンケート調査では、金銭的理由が約半数。中には親との不仲で独立して家を出たかったという事例も。その中で気になったのは、高校の先生に反対された人が多かった点(26%)。日本の国防を担う重要な職業であるにもかかわらず、日教組の色眼鏡で見ると忌むべき職種なのか。
防大では、男女関係なく長距離走、腕立て伏せ、重量物運搬能力が必要とされる。防大に入れば、金づちの人も7月には、平泳ぎで東京湾8kmを4時間程度で泳げるようになる。

第二章 防大女子の生活
入校式までの4日間は、お客様期間と呼ばれ、防大を辞退するのは簡単だが、それ以降は退校手続きに時間と労力がかかる。
ちなみに、直近5年の女子退校率は女子全体の6分の1。
防大全体での中途退校の約8割が1学年のうちに辞めていくが、学力優秀な女子に留年はほとんどいない。
防大生の1日の時間割スケジュールが興味深く面白い。
防大生の制服で学年と陸海空要員の区分がわかる。4年が赤、3年が黃、2年が緑、1年が白、陸は茶、海は紫、空は水色。
防大での各学年の標語。1学年は「模倣実践」、2学年は「切磋琢磨」、3学年は「自主自立」、4学年は「率先垂範」。
防大の教育三本柱は、教育訓練、校友会(部活)、学生舎(上級生との集団生活)。
大きな訓練では、1学年では東京湾遠泳、2学年は富士登山(五合目から行き4時間、帰り2時間の日帰り)や大隊別対抗戦カッター競技、3学年は妙高高原のスキー訓練(人気訓練)と硫黄島研修や断郊(女子を含めた8名のチームで10キロ装備で高低差50mの距離7キロを走る)、4学年は持続走(5人一組で一人5.7キロの校内のコースを走る駅伝)と特に陸上夏の訓練は101km行軍(3日間夜道を歩き4日目の朝に敵陣地に突撃)。また、11月の開校祭に行われる棒倒しも名物競技。
防大の逍遥歌の歌詞も格調高い。
出典不明だが「世の中には三種の性別がある。男子、女子、防大女子だ」決して女とは認められず、かといって男にもなれない。

第三章 防大女子の青春と苦悩
防大生同士の恋愛(内恋)は、校則の禁止ではなく、学生綱領に「ここ小原台は愛を育む場所ではない」と明記されている。とはいえ、青春真っ只中での男女共同生活なので、いろいろあるようです。
女子アンケートでは、こんな正論も。「体力差があることを指導教官が考慮し、学生にそれを当たり前のことと理解させる必要がある。訓練で足手まといになる女子はいらないという短絡的な思考に走らせないためにも、なぜ女性の指揮官が必要なのか、どうすれば共に訓練を乗り切れるのか、男女が協力することでどんなことが生まれるのか、論理的かつ丁寧に詰めることが必要」

第四章 防大女子はどこへ行くのか
女子学生のうち、全体では3人に1人は卒業前に辞めている。主な理由は、怪我、持病、内恋、結婚などだが、中には自衛隊の従たる任務、災害派遣の授業がほとんどない点もあげられていた。
防大入校時にも宣誓書のサインがあるが、卒業前の宣誓書に署名しない者が《任官拒否》と呼ばれる。実態は女子の1割くらいが任官拒否し、幹部自衛官の道を進まない決断をしている。税金で運営されているので、返納義務の無い《任官拒否》はやはり後ろめたい気持ちが強い。さらにその先の、幹部候補生学校に着校しない《着校拒否》も任官拒否に比べ楽にやめられることから、世間的批判もより強い。
幹部候補生学校の所在地(及び卒業までに必要な期間)は、陸上(9ヵ月)は福岡県久留米市、海上(1年)は広島県江田島市、航空(半年)は奈良市。
幹部候補生学校を卒業したあとは、部隊への配属となるが、階級は3尉(16階級のうち上から8番目)で、小隊長として30人規模の一個小隊を率いる立場となる。自衛官ピラミッドで言えば、防大を卒業してわずか1年の20代前半の若者の下に20万人の部下がいることになる。
アンケートではこんな意見も。「部隊では男女の差の前に階級の差がある。それゆえに邪険にされたり下に見られるようなことはあまりなく、女性も一人の幹部として同等に扱われる。逆にいえば、防大のみ女性が誤った扱いを受けている」つまり、防大では良くも悪くも何事も男女平等に扱われるため、体力や指導力の面からどうしても男性優位となるが、幹部となった部隊ではそもそもそれほど体力が必要とされる部署に配置されない、適材適所の運用が当たり前。
陸自の出世コースには、指揮幕僚課程(受験機会は4回)に合格する必要がある。
少し前にも世間を騒がせた女性特有のセクハラ、パワハラ、育児ハラスメントなどもはびこる。筆者の同期女性にも原因は不明だが自死を選んだ者もいる。

終章 防大や自衛隊という男社会で女性が生き抜くには
アンケートでも、日本の米軍基地の待遇と比較して、ベビーシッターのサービスや出産休暇など女性特有の設備充実の声も多い。一方、一等地にある安い議員宿舎を使い、無料の育児施設も使い放題の「使えない私利私欲議員」への高待遇よりも、日々国防のために頑張っている彼らにこそ税金は使われるべきだと思う国民は私も含めて多いと思う。
頑張れ、国防女子!もちろん、男子もね!

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2025年03月20日

Posted by ブクログ

2024.08.16
54歳、地方公共団体の管理職の男性の視点での感想は「自衛隊が変わるのはムリだろうな」という素朴かつ冷徹な予言です。
なぜなら、28年体感してきて地方公共団体は「女性」にとって働きやすい職場になったと心から思いますが、それは職場が良化したわけではなく、地方公共団体をとりまく環境が「女性化」したことを反映しているにすぎないからです。これを語り出すと長くなるのでやめますが、自衛隊、警察、消防といった公安職場は、とりまく環境が一段と閉鎖的であるため、ワタシが生きている間は変わらないと見込んでいます。本当に残念です。この予想は覆ってほしい。

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2024年08月16日

Posted by ブクログ

自らも防大を卒業した著者が女子防大生の日常や悩み、そして、それに続く幹部候補生学校や部隊で、女性幹部としていかに生きるか、あるいは、限界や見切りをつけて退職したか、50人ほどの取材・インタビューを通じて描き出す。
男社会と思われてきた防大や自衛隊という組織において、女性がいかに生きるか、また、多様性の面からも女性が存在することが有意義かということが強調されるが、それだけ未だに女性活躍のための壁が厚いということでもあるようだ。

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2022年03月30日

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