あらすじ
「ウンザリするポピュリズムに淫した民主主義より、能力主義的選抜を勝ち抜いた政治エリートの政治(中国!)の方がマシだ……。
この「誘惑」に抗う術はあるか。
実に困難な課題に本書は果敢に挑戦する」――宮台真司氏、推薦!
世界中をポピュリズムが席捲する中、わたしたちの民主主義はどこへ向かうのか。
人々は政党や議会には期待せず、時に自らの自由の制限もいとわずにトップの強いリーダーシップを望むようになった。
著者は古典から最先端の政治理論まで駆使し、選挙と政党を基盤にした「代表制」と民主主義とはイコールではないこと、現在の社会は「代表制」が機能するための条件を完全に失ってしまったことを明らかにし、一方で、中国統治モデルの可能性と限界も検討する。
民主主義を再生させるヒントはここにある。
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Posted by ブクログ
代表制民主主義の欠陥が指摘されていて興味深いです。改善策も考え出されているが、新書のせいかかなり短め。もう少し自分なりに深堀って考えていきたい。
Posted by ブクログ
ルソーは「人間不平等起源論」で、本来平等で自由であったはずの人間たちの間に不平等が生まれ、自由が喪失されていく歴史の端緒は、すべての人間たちの共有のものを私有することによって開かれると述べている。
国家を誕生させた直接の原因は、万人の万人に対する闘争を終わらせるために人間たちが契約を結び、為政者の職を設ける必要が生じたから。
民主主義がうまく機能するには、憲法や裁判所だけでなく、不文律の規範が必要なのだが、それがなし崩し的に反故にされることで、民主主義がおかしくなる
「社会契約論」における国家の目的は、安全と自由を構成員に提供すること。
そのためにはまず全面的な譲渡がなくてはならない。これにより共有のものとしての国家を設立する。
その国家という共有のものを一般意志の指導の下に置くことで、私物化を防ぐ。
共有のものの構築と私物化の防止こそ、自由でいるための不可欠条件
急速な近代化は、身分や土地によるそれまでの保護を奪うことで人々を根なし草的な存在にし、生活を不安定化させることになり、社会が液状化していった。
民主主義のシナリオは2つの終焉が生じることが予想される。
①ロシアのようなポピュリストによる穏やかな専制政治
②メリトクラシーに基づく中国的統治
Posted by ブクログ
社会や政治の私物化を防ぎ、共有化して自由を取り戻せ。
「人新世の『資本論』」にも通じる問題意識を持った注目の書。政治学や民主主義のおさらいになる教養書でもある。
現代は民主主義が機能するための前提が崩されてしまった危ない時代といえる。とはいえ、「中国の誘惑」に屈するのはイヤだ。ではどうすれば?
「そもそも民主主義ってなんだ」という根源から考察することで、道筋が見えてくる。コロナ後を見据えて、より良い政治・社会へ、まず一歩を踏み出すために、必読だ。
ただし、やや書き方が固いかもしれない。ぜひとも岩波ジュニア新書あたりで、中学高校生向けにも分かりやすく広く伝えてほしいところだ。