あらすじ
病院勤めの若い外科医・梅原と、彼の友人でドンファン型の演出家・五十嵐。その二人をめぐって展開する愛の葛藤。恋と野望にゆがむ青春を描く、長編大ロマン。
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昭和は哀しからずや
モチーフになっているのが、若山牧水の、白鳥は哀しからずや空の青海にも染まずただよふ、という歌なのだと後半に作者は言及している。昭和三十年代の古い価値観が女人往生の議論のように女性を追い詰めていくのは、現代感覚からすれば痛々しい。とはいえ、小説はやはり一種の世相を反映している証言集であるとも考慮すれば、登場人物の恋模様は、職業婦人を取り巻く社会的抑圧をかなり詳細に描写していると思われる。男女雇用機会均等という言葉が生まれる遥か以前の青春は、いかにも窮屈であるけれど、藤澤桓夫の持つ独特の楽天性が幸福に至る道筋を切り拓く、何物にも染まらない若さを讃美しているようだ。