あらすじ
高知県の景勝地・桂浜にある小さな水族館「桂浜水族館」。マスコットキャラクター・おとどちゃんのユニークなTwitterがバズり、一躍人気者に。その舞台裏にある、職員一斉退職からの再起、人気飼育員の苦悩、ベテラン飼育員の生き様、生き物の生と死、女性館長の悩める心の裡を、おとどちゃんが綴ります。今、多くの人がこの水族館を拠り所にしていることがよくわかる、“こじゃんとエモい”(強く心に訴えかける)エッセイ!
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Posted by ブクログ
これほどまでに、いい意味で期待を裏切られたことはない、と断言できる一冊(^ ^;
著者である「おとどちゃん」は、知る人ぞ知る 高知「桂浜水族館」のマスコット・キャラクターである。ゆるキャラにしては「不気味寄り」なルックスと、それに違わぬtwitterでの暴れん坊ぶり(^ ^; 本作も、荒ぶった暴言で満たされているに違いない...と読み始めて、最初の数行でもう横っ面をひっ叩かれる感じ(^ ^;
実際の本書は、とてもきれいで穏やかな文体で綴られた、繊細な心の機微と生命への賛歌で満ちあふれている。5年前に桂浜水族館で生まれ、それから起こった数々の事件や大小様々なできごとに、驚き、畏れ、傷付き、生きる意味や気力を失うまでになったおとどちゃん。それが、日々の営みの中で、様々な人や動物との出会いと別れを通して、少しずつ許され、許し、頑なだった心が解けて行き、同じように悩み傷ついた「後輩」たちを優しく包み、愛せるまでになった軌跡が綴られる。
心象や場面を描写することばのチョイスは、独特で、真摯で、丁寧である。たくさんの命に囲まれて暮らすおとどちゃんは、当然の帰結として死もとても身近であり、生命と死に関してあくまで誠実に向かい合っている。「いのちを生き終える」という一言だけでも、その生に対する最大限の尊敬と愛情を感じられる。
章間には、若い人からの「お悩み相談」みたいなものが挿入されている。若さゆえ(年齢的な意味に限らず)の苦悩に対して、おとどちゃんは直接レシーブを打ち返すのではなく、一度自分の心の中に落とし込み、消化し、「おとどフィルター」でくるんでから、そっと質問主に手渡しで返す。自身が底辺を経験し、様々な人々に愛されて再浮上できたおとどちゃんだからこその、とても優しく暖かい返信。行間から、文字間から、宝物があふれてくる。
読み始めで衝撃を受け、読中は「読み終わるのが惜しくて」わざと時間を開けて読んだりして。読後は、とにかく人に読ませたくなる一冊。まずは人生に悩んでいる、自分の娘に読ませようと思う。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ古くて何もない水族館
イケメンで人を集めてる水族館
って悪いイメージだったけど
おとどちゃんを含め、誰かの大切な居場所なんだなと。
桂浜水族館というか
そこにいる人の魅力が詰まった愛のある本でした。
今度行ってみよう。
Posted by ブクログ
桂浜水族館公式マスコットキャラクターおとどちゃんの初エッセイ。
桂浜水族館の歴史と飼育員さんたちについて、SNSでの発信内容とは異なる言葉で綴られており、おとどちゃんの繊細さが伝わってきた。
生きることに不器用で、それでも命に対して真摯に向き合う姿が心に響く。
飼育員さんやスタッフさん、館長の、ヒトも含めた、そこで生きる全ての生き物たちに向ける愛が、そこかしこに溢れている。
彼ら彼女らが、私たちの知らない所で、苦悩し、葛藤し、藻掻いている姿が垣間見れた。表に出ることが全てではない。
命と向き合うということは、そういうことだ。
以前、テレビで海獣班のチームリーダーが、桂浜水族館の良さのひとつに「お客さんとの距離が近い」ところと言っていた。
このエッセイで、さらに距離が縮まったように思う。
いつか必ず行ってみたい。