あらすじ
万人に幸せをもたらす真に豊かで平等な理想社会……中国共産党が歩んだ社会主義革命への道は、目標とは似ても似つかぬ大悲劇を招いてしまった。文化大革命は民衆に夥しい犠牲者を生んだ。改革開放が進んだのちも官僚の汚職が蔓延し、農民への搾取が横行する悲惨な現況。伝統的抑圧からの解放をめざしたはずの共産党は、むしろ伝統の申し子だったのではないか。中華人民共和国は「社会主義の衣を着た封建王朝」――本書が引導を渡す。変わりたくても変われない、逃れようのない〈悲劇〉への哀悼歌。 [本書のポイント]中国共産党は打倒封建の目標を達成できたのか?/抗日の主役はほんとうに毛沢東なのか?/文化大革命の真意とは?/社会主義は中国で有効に機能しているのか?/清末から孫文の興した国民党にいたるまで、最初から改革開放をめざしていたのではないか?/だとすれば共産党体制ではなくてもよかったのではないか?/中国人は幸福になれるのか?
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Posted by ブクログ
中国の近代化の歴史を概観する。アヘン戦争にはじまる列強による蚕食,革命,軍閥割拠,日本の侵出と国共内戦。共産党による統一後も,大躍進政策は大失敗,文革の嵐が吹き荒れ,天安門事件にみられるような民主化への反動など,一世紀以上にわたってかの国の人々は塗炭の苦しみを味わってきた。国民の間で身内以外の者に対する不信感が根強いのも,このような歴史をみれば大きくうなづける。著者は,社会主義の理想を掲げる中共政権も実質的には中国に伝統的な封建王朝に過ぎないという批判的観点でもって論を進める。なるほど,毛沢東→鄧小平→江沢民→胡錦濤と指導者が世襲でないところを除けば,中共の前近代的・封建的性格はまだかなり残存しているのだろう。