【感想・ネタバレ】〈ヤンチャな子ら〉のエスノグラフィー ヤンキーの生活世界を描き出すのレビュー

あらすじ

ヤンキーという言葉から、どのようなイメージをもつだろうか。時代遅れというイメージがある一方で、近年では「マイルドヤンキー」のようにマーケティングの対象として注目されたりもしている。しかし、ヤンキーと呼ばれる若者が何を考え、どのように生活をしているのか、十分な調査に基づいた書物は少ない。

大阪府の高校で3年間、〈ヤンチャな子ら〉と過ごしフィールドワークして、対立だけではない教師との関係、〈インキャラ〉とみずからの集団の線引き、家族との距離感を丁寧にすくい上げる。そして、高校を中退/卒業したあとの生活も調査し、大人への移行期に社会関係を駆使して生き抜く実際の姿を活写する。

集団の内部の亀裂、地域・学校・家族との軋轢、貧困や孤立――折り重なる社会的亀裂を抱える若者の「現場」から、分断や排除に傾かない社会関係の重要性を指し示す。

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Posted by ブクログ

批判点はいくつかあるけど、総じて評価すれば「大変優れた良書」だと思う。過去に一度読んで再読したが、やはり改めて良い本だと思った。

本書では、大阪府の公立高校の〈ヤンチャな子ら〉(≒ヤンキー)を対象に、その子らの人生--家族・学校・卒業後の進路--をエスノグラフィーの手法を通じて描き出している。著者が得た語りから描かれる〈ヤンチャな子ら〉の人生から学ぶことで、ヤンキーについて語られがちな一般的な言説から距離を取るとともに、日々の教育実践や、社会の制度設計のあり方についての示唆を得ることができる。

批判点としては、たとえば、本書の第4章と第5章で登場する「資源」についての検証と考察が物足りない点が挙げられる。「資源」は本書内ではそれほど重要な言葉として扱われていないように思えるが、この言葉の本書における位置は重要だと考えた。なぜなら、本書の中で登場する「社会的ネットワーク」(本書内で用いられていた「社会関係」とも言い換えられるか)は数ある「資源」の一つであると考えられるからだ。だからこそ、「資源」とは何か?についてのより深い記述が必要だったように思える。あるいは、その他の類似概念(たとえば、資本)との違いはどこにあるのか?についても疑問に感じた。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

タイトルとイラストでもっと簡単な説明かと思っていたら、予想が外れて、そうとう重厚な内容である。教育社会学の教科書としても使えるし、フィールドワークの先行研究としてフィールドワークをこれから研究しようとする院生にも役立つ。参考文献もきちんと書かれているので、これからの日本の若者についてのフィールドワークの基本書となる。

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2025年11月13日

Posted by ブクログ

マーケティング用語になったヤンキー、貧困による断絶化など、気になっていたテーマであり、装丁がインパクト大なので読んでみた。
読みやすく、深掘りしており興味深かった。

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2019年06月03日

Posted by ブクログ

〈ヤンチャな子ら〉について、真剣に焦点を当てた本。安定/不安定での見方なども面白い。その観点から見ていくと、また見方も変わる。

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2025年08月03日

Posted by ブクログ

真面目な研究書です。それはいいんだけど、先行研究の内容や理論をあれこれ言っている部分が多くて、決して読みやすい本ではない。
内容は複雑でまとめにくいが、地元ネットワークに古くから属している子と小学生後半遺構の他所から移住してきた子で、地元ネットワークへの組み込まれ方の違いや、就職先を紹介してもらう伝手の質に差がある、というのが新しい知見。

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2019年10月03日

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