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Posted by ブクログ
「芭蕉の風景(下)」(小澤 實)を読んだ。
(芭蕉忌に間に合った)
芭蕉の吟行をなぞり、芭蕉と同じ土地で句を詠み続けた俳人小澤實のライフワーク。
いよいよ舞台が奥の細道から芭蕉最後の旅まで。
お気に入りを一句だけ引く
しら露もこぼさぬ萩のうねり哉 芭蕉
著者の詠んだ中からも一句
秋日和みづくさ水の意に添ひぬ 實
ところで、
暑き日を海にいれたり最上川 芭蕉
という句の、暑き日は「熱き太陽」のことだとずっとイメージしていたのだけれど、「暑かった一日」を海に流し込むという捉え方もあるとは目から鱗である。
さらにこの、
蚤虱馬の尿(ばり)する枕もと 芭蕉
は、私が高校生の頃(もう半世紀前)は尿(しと)と読んでいましたが、近年芭蕉自筆本に(ばり)と読みがふられていたとのこと。文献をひたすら研究する人々に頭が下がる。
小澤 實氏の芭蕉愛と俳人としての鋭い感性がこの著作を素晴らしいものにしている。
印象深い一文を最後に引く。
『句碑がなかったら、この地に導かれることはなかった。これもまた芭蕉ゆかりの風景であると思うと、いとおしく眺められた。』(本文より)