あらすじ
宇宙が星や銀河、われわれ人間などの「物質」でできているのは、最初期にほんの少しだけ「反物質」より「物質」の方が多かったからである。もし物質と反物質の量が同じだったら、両者は対消滅してしまい、宇宙はからっぽの空間になっただろう……。問題のカギを握るCP対称性の破れの物理モデルを提唱した小林・益川理論の正しさを実験的に示し、この理論にノーベル物理学賞をもたらしたのが、本書の主役であるKEK(高エネルギー加速器研究機構)だ。各時代を支えた研究者たちが、驚きに満ちた実験の最前線と未解決の謎を解決する。
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Posted by ブクログ
日本の素粒子物理学の最高峰の頭脳の人たちが、かなりわかりやすくなるように噛み砕いて本書を書いてくれている。タイトルの「宇宙はなぜ物質でできているのか」とは興味を持つのに最適である。文系置き去りタイムに終止符を打った。というか文系に理解してもらわないと、研究費の予算がつきにくいから、この分野をもっと広く知ってもらいたいという熱を感じられる。
粒子と反粒子が衝突すると、打ち消しあって消滅する。これが互いに全く同じ性質であるならば、衝突して対消滅して無になるはずである。これをCP対称性という。しかしこの宇宙は物質で満たされている。ということは、粒子と反粒子には何らかの性質の違いがあるために、宇宙には物質が残っているらしい。このCP対称性の条件に合致しない要素を「CP対称性の破れ」というららしい。CP対称性が破れているから、わたしたちも、犬も、植物も、土も、地球も、太陽も、銀河系も、宇宙も存在している。
(どうでもいいけど文系が死亡するからもうちょっとわかりやすく「粒子の特徴の差異」とかにしてほしいわよね。物理学者では基本中の基本だから、破れ、だけで通じるのかしら。)
ということを理論上は発見しても、実験して証明しないと科学の意味はない。ということで、世界の物理学者達は宇宙から降り注ぐ物質を次から次へと発見してこれはなんなのかということを発表したり、素粒子をぶつけてみて、どういう現象が見られるのかを観察しようとしてみた。
そこで登場するのが加速器である。実験でぶつけてみたい素粒子を用意して、加速器ですげー速さまで加速して、ぶつけた時にどういうことが起こったのかのデータをとりはじめた。
日本は大天才湯川秀樹先生を筆頭に物理学も世界に遅れを取らないレベルだったらしいが、戦後GHQの指導により、日本で保有していたサイクロトロン加速器4つを破棄させられて、実験のしようがなくなって暗黒時代を迎える。
しばらくして、アメリカのローレンス博士という人が来日して日本の研究の実態を見て、こんなにいい人材がいるのに研究できないなんてばかじゃね?と言ったかは知らないが、大いに嘆いてGHOバーカバーカ!と言ってくれた結果、世論が大きく動いて、サンフランシスコ講和条約に伴って加速器を建設してもいいことになったらしい。
そしてついに、つくばに一周3kmもの巨大な加速器を作ろうとしたが、建設段階で世界の加速器の潮流が次のものに移ってきており、あれ、最新の研究に遅れを取るんじゃね?って冷や汗をかいたが、いやいや全然使えるから!!と頑張って批判する者を説得(したのかどうかはしらないが)して苦労を乗り越えて建設完了。今では広く研究者の研究が進むように開放するようにして、日本の素粒子物理学者たちのビッグマザー的な存在なっているらしい。
すごい成果だと、岐阜県飛騨市のスーパーカミオカンデとの共同実験で、つくばから間違えようがないKEK印のついた特徴的な素粒子を飛ばして、スーパーカミオカンデで観測できるか?という実験をやって、見事観測できたらしい。
ビックバンが起こって、宇宙ができたというけど、ビックバンがどういう条件で起こせるのかはまだ解明中で、宇宙の謎はまだまだ深いし、研究のしようがあるということで、文系の入り口として良書であった。