あらすじ
妻と称する三人の妊婦が待っていた屋敷で繰り広げられる本妻捜し「お母さんをさがせ」。両親に黙って出産しようとする女子高生と、父親の名乗りをあげる三人の男性が引き起こす大騒動「お父さんをさがせ」。次々取り消される依頼と、新興宗教絡みの拉致事件「赤ちゃんをさがせ」――自宅出産専門の出張助産婦コンビが向かう先は、なぜか奇妙な謎を抱えた家庭ばかり。明晰な頭脳でそれらの謎を鮮やかに解き明かすのは(推定)七十歳、通称「伝説のカリスマ助産婦」明楽先生!見習い助産婦・陽奈の成長と安楽椅子探偵の冴え渡る推理を描く、爽やかなユーモアに満ちたシリーズ第一弾。
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Posted by ブクログ
助産婦が主人公の日常の謎系ミステリ。伝説のカリスマ助産婦の明楽先生が探偵役。自宅出産専門の出張助産婦の聡子と見習い助手の陽奈がさまざまな事件に巻き込まれる。3つの短編からなる作品。
男の子がほしいので,実子として届出をするために,三人の女性に子どもを産まそうとする男の企みを阻止するために,誰が「サツキさん」という女性なのかを見破る「お母さんをさがせ」,女子高生が,ボーイフレンドである男の子どもを産もうとしているが,「父親は自分かも知れない」,30歳の家庭教師やら,ふとしたことで知り合った中年男性が,自分が父親かもしれないといったことを言い出す「お父さんをさがせ」,聡子のもと旦那があらわれ,もと旦那が聡子の仕事を妨害していると考えた陽奈がいろいろと嗅ぎ回る「赤ちゃんをさがせ」の3つの作品からなる。
ミステリといっても,謎やトリックがあるわけではなく,叙述トリックで読者を錯覚させる系。話全体がキレイごとではない。「お母さんをさがせ」では,黒幕的な存在の家政婦の和さんが,「何だかんだきれいごとを言ったってね,結局,お金で買うんですよ,何もかも。」といって,この企みをしている点だとか,「お父さんをさがせ」で,女子高生の理帆が,ろくでもない家庭教師の米村という男を懲らしめたり,中年男性の立場を取り戻すためにいろいろ画策する点だとか,「赤ちゃんをさがせ」で,聡子と旦那がヨリを戻すというオチとか,男性作家ではあまり考えない話のように思える。現実的な話というか,キレイごとでない話で,こういう話は結構好み。トータル評価は★3かな。