【感想・ネタバレ】スタジアム 虹の事件簿のレビュー

あらすじ

観客席で不審な行動を連発し、遂には風に舞う紙吹雪の中で無数の一万円札をばら撒き始めた男の真意は? 自分が高校教師殺害事件の真犯人だと唐突に名乗り出た青年の運命は? アルバイトの女の子が遭遇した奇妙な出来事の意味は? そして、“結婚”の二文字を前にして揺れ動く女性が巻き込まれた事件の行方は? プロ野球球団・東海レインボーズのスタジアムで、不思議な事件を次々と解決に導くのは、筋金入りの野球音痴の球団オーナー虹森多佳子。優勝の夢に向かって走り始めた万年最下位球団の奮闘と、安楽椅子探偵の名推理を軽やかに描いた愛すべき本格ミステリ。ユーモアミステリに新風を吹き込む青井夏海のデビュー作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 万年最下位球団のレインボーズの新オーナー多佳子が主人公の野球を観戦しているシーンを舞台とした連作ミステリ。
 野球を知らないが,オーナーになった多佳子が,野球を学んでいくという展開だが,多佳子のセリフなどがいい味を出している。「ひとつだけ,わたくしのような素人にもとてもわかりやすい点の取り方がありました。ホームランです。」や,「わたくしなどルールを覚えるのに手一杯なものですから,そのチームらしい勝ち方だとか,らしくない勝ち方があるとは考えてみたこともなかったのです。」など,とても味がある。
 個々の作品のミステリとしてのデキはそこそこ。ただ,「第五話 ダイヤモンドにかかる虹」の裕香という女性の描き方などは,青井夏海らしく,なかなか癖のあるキャラクター。トータルでは★3かな。

○ 幻の虹
 誘拐され,球場で札束をばらまくように脅迫された男の話。真相は,球場で札束をばらまく行為そのものが,アリバイ工作だった。殺人を犯した犯人が,殺人を犯した時間に,球場でばらまかれていたはずの札束を持っているという点がアリバイ工作。誘拐の被害者は,殺人犯の共犯だったというオチ

○ 見えない虹
 文通をしていた東海レインボーズファンの男女が,東海レインボーズの試合で,始めて出会う。しかし,その試合で,男は,高校時代の生活指導の教師の殺人事件の容疑者となってしまう。真相は,自分自身も恨んでいる生活指導の教師を殺害した誰かをかばって,男が嘘を言っていたというもの。多佳子は,被害者がヘッドフォンステレオで音楽を聴いていたところから,被害者が野球嫌いであることを知っていたものが犯人だと気付く。

○ 破れた虹
 バイトの女の子が,Aから預かった小物をAと一緒に喫茶店に来ていたBに返そうとしたら,人違いだと言われた事件から,多佳子は,バイトの女の子がBから命を狙われていたことを見抜く。

○ 騒々しい虹
 水やりのバイトを頼まれた小学生の話。小学生は,バイトを頼んだユキエという女性が命を狙われていると考えたが,真相は,ユキエとアツシの結婚問題。家族に納得させるために一芝居うったという話。

○ ダイヤモンドに掛かる虹
 昭次,万希夫という二人の男と裕香という女の話。「よしだふじこ」という女性の殺人事件と,容疑者である飛鳥という男の失踪。そして,万希夫がその容疑者となる。
 真相は,万希夫は,婚約者であるレインボーズのオーナーの娘と破談になったが,最終的によりをもどす。その中で,万希夫が,よしだふじことの関係を疑われたのだ。真相は,飛鳥という男を殺害するために,そのカモフラージュとしてよしだふじこを殺害したというオチ。
 また,昭次という男の裕香への思いも誤解だった。裕香という女性の描き方が,青井夏海らしい作品。

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2016年01月03日

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