【感想・ネタバレ】MM9【文庫版】のレビュー

怪獣と聞くと幼き日を思い出しますが、本作は驚くほど綿密に練られた大人のSF小説です。怪獣がシリアスな災害として描かれ、“特異生物対策部”が怪獣の出現予測や対策を講じる……まさに「プロフェッショナル!」な仕事ぶりの隊員達が実に熱い!
法律や世論などの兼ね合いで判断・決定がスムーズにいかないもどかしさは『図書館戦争』などにも通じるものがあります。経済への影響や動物愛護の声も無視できず、危険度が分かるまで退治に踏み切れないといった現実的な描写には妙にソワソワ……。
怪獣については実際の神話や伝説、伝承などを絡ませることで深みを増し、雰囲気を損わないまま説得力も演出。対怪獣の武器描写も詳細です。無反動砲「カールグスタフ」使用上の注意や装甲貫通のメカニズム「モンロー効果」まで言及されていたことには心底驚きました!(マニアックな感動で失礼;)
現実的な展開で怪獣対策を行うSF作品、大人になった今だからこそ読んで欲しい一作です。

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Posted by ブクログ

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ウルトラマンに出てくる怪獣ものの小説版かと期待値半分。
頭の隅にウルトラ怪獣の映像をチラつかせながら本を開いて絶句!
なんと古代から伝承される神話と宇宙をつなぐ壮大な物語が展開していくではないか!
怪獣が地球上に出現することの矛盾。
「あんな大きなものがそんなスピードで動くかいっ!あり得ない~」と言ってしまうようなことまで子供だましや安易な発想でなくキチンと理論的に説明されていく。
読んでる方は納得するしかないじゃないですか、山本先生♪
いや~面白かった!
おかげで怪獣や神話の見方が変わりましたよ♪
非現実の世界に飛び込む勇気のある方にお薦めです☆彡

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2016年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

予想していたより面白かった。
さくらのキャラクターいいですね。
難しい理論もあったけど純粋に楽しく読みました。シリーズがあるようなのでまた読みたいです。

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2018年02月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

MMとはモンスターマグニチュードのこと
怪獣による被害規模を災害と同じように数値化したもの
怪獣は「気象庁特異生物対策部」にて命名、予報や警報が出され、退治するのは自衛隊である
1海老の群生体シークラウド
2巨大少女ヒメ…このヒメはテロ組織CCIによって飼われていた
3アフリカのセネガルから卵を取り返しに飛んできたグロウバット
4気特対の後方宣伝のVTR撮り最中に現れた奇声を発する植物怪獣メガドレイク
5長い眠りから目覚めた古代の禍つ神クトウリュウ…これもCCIの伊豆野(妖怪)が絡んでいる。ヒメに退治される

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2012年02月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

地震や台風などの自然災害に加え、怪獣災害というものがある世界(っていう設定を見た段階でシムシティ2000を思い出した)。世界有数の怪獣大国日本。だが甚大な被害をもたらす可能性がある怪獣に立ち向かうのは、アメコミ的ヒーローでもなく、宇宙から来た正義の使者でもなく、カラフルな五人組戦隊でもなく、怪獣対策のスペシャリスト「気象庁特異生物対策部」通称「気特対」、つまりは国家公務員である。怪獣の早期発見、データ収集・観測、被害規模の予測、警報の発令、そしてその撃退方法のアドバイスが主な任務である。気特対は怪獣を迎撃する攻撃手段を持ち合わせていないので、直接怪獣と戦うのは自衛隊ではあるが。

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怪獣はその規模にあわせてMM0からMM9までで評価される。MMはモンスター・マグニチュードの略だ。
「怪獣の体積が2.5倍になれば、人口密集地に及ぼす最大の被害は四倍になる」とガスリーは唱えた。怪獣の皮膚の厚さは体積の立方根に比例し、厚くなるほど弾丸は貫通しにくくなる。怪獣を殺すのに必要な累積ダメージは体積に比例する。単位断面積あたりの骨や筋肉の強度は体積の三分の二乗に比例し、地上での移動速度は体積の六分の一乗に比例する。建造物に加えられるダメージの大きさは体積の四分の一乗に関係する……といった要素すべて加味すると、怪獣が人口密集地に侵入した場合、軍に倒されるまでに最大どれだけの破壊を繰り広げるかが求められるというのだ。

(中略)現在は同体積の水の重量に換算したトン数を基準にMMが算出されている。MM0は1トンの水に等しい体積の小型怪獣で、MMが1上がるごとに体積は2.5倍になる。

兵器の殺傷能力が100年前よりも増大したこと、堅牢な高層ビルが増えたことなどにより、現在ではガスリーの法則は成り立たなくなっている。それでもMMは怪獣の脅威を予測する目安として使われ続けている。
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数字が一つ上がるにつれ、被害規模は格段に大きくなる、というところは地震のマグニチュードと同じ。怪獣の予想進路等発表しながら警報を出していく様はさながら台風。

数百トンを超える体重の巨大生物は、科学に照らし合わせると己の体重を支えきれないはず。それなのにMM5を超える怪獣達は地上に現れ、二本足で闊歩したりする。怪獣には人類が知っている物理学は通用しない。というのも、怪獣は人間が属する「ビックバン宇宙」とは異なる「神話宇宙」の法則に支配される存在だからである。

そんな人知の及ばない怪獣相手に日々奮戦する気特対。彼らの前に、一糸まとわぬ少女の姿をした怪獣(テレビ中継はモザイク付き)が現れたり、怪獣を使ったテロを企てる組織の存在が明らかになっていったり……。そして観測史上最大、伝説級のMM9怪獣が日本で目覚めてしまう。

怪獣に有効な必殺技を持つわけでもなく、ヒーローのような華々しい活躍をするわけでもなく、愛と勇気だけで人類が救えるわけでもなく。マスコミからの批難にさらされながらも、懸命に仕事をこなす命がけの現場、責任という重圧に耐える本部。SF的理屈付けに人間ドラマをおり混ぜたリアリティあふれる怪獣モノ。災害を扱った作品をエンターテイメント小説と称するのにいささか抵抗はあるが、己らの力の限界を知りつつも、人を助けるため困難に立ち向かう隊員たちの姿には励まされるものがある。そしてラストに示唆されるこの世界のひとつの可能性。なんかもうわくわくが止まらない。

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2023年03月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

山本 弘 『MM9』
(2007年11月・東京創元社)

地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。
有数の怪獣大国である日本では、怪獣対策のスペシャリスト集団「気象庁特異生物対策部」
略して「気特対」が日夜を問わず日本の防衛に駆け回っていた。
多種多様な怪獣たちの出現予測に正体の特定、そして自衛隊と連携するべく直接現場で作戦行動を執る。
世論の非難を浴びることも度々で、誰かがやらなければならないこととはいえ、苛酷で割に合わない任務だ。
それぞれの職能を活かして、相次ぐ難局に立ち向かう気特対部員たちの活躍を描く、本格SF+怪獣小説!
●収録作品
「緊急!怪獣警報発令」「危険!少女逃亡中」「脅威!飛行怪獣襲来」
「密着!気特対24時」「出現!黙示録大怪獣」
         (東京創元社HPより)

一読して、やられた!と思わせる作品である。
マニアックな方面からは、やれパクリだのオマージュだの、SF的な設定がどうだの、批判的な声もあるだろう。
でも、でも、でもでもでも・・・、まさにそんなの関係ねぇ!であります。
怪獣は自然災害です。だから気象庁の管轄なんです。
台風と一緒なんです。だから怪獣5号なんです。
さらにはカッコイイ名前つけたり、進路予測だってやっちゃいます。
・・・このアイデアだけでもう当選確定であります。



この後、多少ネタバレ。




ただ、「怪獣」と「妖怪」を同じ扱いにするのはどうなん?
西洋の世界で怪獣も妖怪も、モンスター、のカテゴリーに入るのはわかるわいな。
でも日本じゃ怪獣と妖怪は違うんじゃね?

怪物くんの後ろにフランケンじゃなくてガメラがおったらおかしいやん。
京極夏彦の次作が『エレキングの悩み』やったらおかしいやん。
仮面ライダーの敵の総大将がぬらりひょんやったらおかしいやん。

日本人ならば誰もが常識のように持ってるはずのその枠組みを、ごちゃまぜにしたことによる違和感。
作者が盛り込みたかったところも着地点もわかるけど、これじゃ最終話だけ梅原克文の『カムナビ』やん。

せっかく傑作になりそうなところだったのに、そのへんのズレがちょっともったいなかったなぁ・・・。

75点(100点満点)。

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2012年09月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「怪獣」が自然災害として位置づけられる「if」の世界のお話。SFの旗手らしく、荒唐無稽な設定もうまく消化させられているように思いました。
この手の話っていかにその設定にリアリティを持たせられるかが肝だと思うんですがそのあたりはさすがですね。

まあ内容はお気楽な連作短編な感じですが、「24時」のようにバカっぽくまとめてある話もあれば、最後の「トンデモ」系の話もあれば・・・
最終的な落とし所がトンデモ系になってしまったのが自分の好みからははずれてしまっていてちょっと残念。

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2012年04月02日

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