あらすじ
書籍問屋の荷造り人,ニキビ・ソバカス薬の通信販売員,職業紹介所職員など様々な職業を転々としながら,ユーモアにみちた,滋味掬すべき詩を書き続けた詩人山之口貘(1903-63)の詩152篇を精選.結婚願望や貧乏生活,あるいは故郷沖縄のなつかしい風景やビキニ核実験を描いたものなど,誰からも「貘さん」と親しげに呼ばれた詩人の精髄.
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Posted by ブクログ
柳広司「南風に乗る」で知った山之口貘の詩集(岩波文庫)、時間をかけて味わった。好きになった。
最後に高良勉の解説を読み、柳広司の小説通りの人だと得心しさらに好きになった。
これからも時々はページを繰ることになるだろう。
Posted by ブクログ
詩を読みながら、身体が軽くなる心地がしました。
優れた詩というのは、なべてそういうものかもしれませんが、リズムがいい。
リズムがいい詩は、心だけでなく、身体にも響きます。
山之口貘は1編の詩を完成させるまでに、200~300枚も原稿を使ったそう。
それも頷けるというものです。
リズムがいいというのは、平易な言葉を使っていることも与っています。
恐らく中学生程度の国語力があれば、難なく読めるのではないでしょうか。
内容が薄いというわけではありません。
むしろ、濃密。
言葉は平易ですが、徹底的に選び抜かれ、緻密に組み立てられているのが分かります。
テーマは、貧乏生活や結婚願望、故郷の沖縄などなど。
どれも悲惨に描けば描けるテーマです。
ただ、山之口の詩は独自の諧謔にあふれ、明るさに満ちています。
本当に、どれも熟読玩味したい詩ばかり。
私は特に、結婚願望について書いた詩が気に入りました。
以下は、「求婚の広告」という詩です。
□□□
一日もはやく私は結婚をしたいのです
結婚さえすれば
私は人一倍生きていたくなるでしょう
かように私は面白い男であると私もおもうのです
面白い男と面白く暮したくなって
私をおっとにしたくなって
せんちめんたるになっている女はそこらにいませんか
さっさと来て呉れませんか
見えもしない風を見ているかのように
どの女があなたであるかは知らないが
あなたを
私は待ち詫びているのです
□□□
書いていて、あらためて、リズムがいいのが分かりました笑。
結婚願望について、これだけストレートに思いを発露した作品を私は知りません。
それどころか、一般の日本人男性は照れもあるのか、結婚については、突き放したり、斜に構えたり、ひねくれた態度で臨むのが常で、肯定的な場合でも、とても控えめです。
それだけに、山之口のこの詩はとても新鮮に映りますし、私は好感しました。
私でも知っている金子光晴に、「日本のほんとうの詩は山之口君のような人達からはじまる」とまで言わしめた山之口貘。
素敵な詩に出合うことができました。