【感想・ネタバレ】考える親鸞―「私は間違っている」から始まる思想―(新潮選書)のレビュー

あらすじ

右翼から左翼、文学者や哲学者まで、近代以降の論客がその魅力や影響を語り続けてきた国民的高僧・親鸞。「懺悔の達人」「反権力の象徴」「宗教の解体者」など、それぞれの親鸞論を読み解き、「絶対他力」「自然法爾」といった思想の核心に迫る。日本人の“知的源泉”に親鸞あり――。気鋭の研究者による、親鸞論の決定版!

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Posted by ブクログ

近代以降の日本における、親鸞の思想の受容史を概観している本です。

親鸞の思想は宗門の枠を越えて、多くの文学者や思想家によってとりあげられ、それぞれの立場から多様なしかたでその思想の意義が語られてきました。本書では、そうした近代以降の「親鸞現象」というべき事態を考察の対象にとりあげ、親鸞の名のもとに彼らがいったいどのような問題について考察をおこなっていたのかということを論じています。

本書で議論の対象にされている文学者や思想家は多数にのぼっていますが、主な人物としては、宗門内に身を置きつつ独創的な思想を語った清沢満之や近角常観、小説のなかで親鸞の人間像をえがき出した倉田百三や吉川英治、哲学者として親鸞の思想の解釈をおこなった田辺元や三木清、そして戦後の思想的問題に独自の立場から取り組むなかで親鸞への共感を語った吉本隆明などです。

このほかにも多くの人物の親鸞解釈が参照されており、一人ひとりの思想についてはそれほど立ち入った議論がなされているわけではありません。とはいうものの、近代以降の日本におけるさまざまな問題に対して、親鸞の思想から触発を受けることによって、みずからの思索を築いていった人びとの多様性を示すことが本書のねらいだとみなすことができるならば、そうした企図は果たされているといってよいのではないかと思います。

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2024年03月20日

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