あらすじ
──植物は嘘をつかない
植物は優しい。どこまでも優しい。
植物に囚われる、この病は人々の救いなのかもしれない。
樹木医である雨宮芙蓉は、心療内科医の朝比奈匡助の依頼で、奇妙な仕事をしていた。それは寄生植物病(通称・ボタニカル病)、つまり植物に寄生されるという未知の病に罹った人々を診察すること。さまざまな植物に寄生された患者たちを治療するために、患者たちの持つ苦悩に向き合い、耳を傾ける芙蓉。しかし、この病には大きな謎が潜んでいた──。
朝宮運河・解説/丹地陽子・装画
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Posted by ブクログ
はじめのころから主人公も患者なんだろうなと思いつつ読み進めましたが、ほぼ花が見せた夢と混同していて、結局どのあたりが現実かわからなくなります。
父親が言う通り、いつか花から本当に解放されて幸せになってほしいです。花に蝕まれてしまう前に。
Posted by ブクログ
花を吐き出す者。
その花の特性を引き継いだ者。
そして植物に寄生された者、いや共生している者というべきか。
ボタニカル病と一口に言っても、関わる花の種類も症状の出方も様々だ。
中には日常生活に支障の出るものもあるが、共通してどれも美しく、そして植物たちは総じて優しい。
宿主に優しい。
それはきっと、作中で最大の患者に対しても。
ボタニカル病自体がファンタジーじみているが、どうしてボタニカル病になったのか、その患者が抱えている背景を読み解くのは現実的なミステリ仕立て。
でも、季節が進み後半になるにつれて、じわじわと現実から遠のいていく。
不穏さが増していく。
どうしてだろうと思っていたら、前述の最大のボタニカル病患者が抱えていたものと分かって驚いた。
伏線は最初の方から丁寧に用意されていたが、最後にその謎が解明されたときの衝撃と言ったら!
これは二度読みをして、改めて作中世界を「区分け」したくなると思う。
この最大の患者に寄生している、いやこれもまた共生だろうが、その共生している植物の特性がまたこの物語の構築のキーになるという。
敢えてこの植物を選択してきたところがにくいというか。
患者にとってみれば優しい世界。
でもそれは夢幻の世界。
だから、あるキャラから見るとその患者の世界は優しいどころか、苦しくて切ない世界だと分かって胸が苦しくなった。
それでも、そのキャラは患者を見捨てず寄り添うのだ。
その決意にまた胸が苦しくなった。
植物たちは優しいのに、現実は優しくないのだ。
Posted by ブクログ
ファンタジーという感じはあまりしなかったです。
どのお話も、優しいけれど少し苦めな締まり方をしていました。解決しても、何か心にはなんとも言えない不思議な気持ちが残っていて、あまりすっきりしないような…そんな感じ。
読み終わる頃には、芙蓉と朝比奈のことがもっと好きになっていました。
最初と最後が全く同じ文章になっていました。内容を知ってからその文章を見ると、意味が分かってしまうからちょっとゾワゾワします。