【感想・ネタバレ】ゴミに未来を託した男 石井邦夫伝のレビュー

あらすじ

何歩でも先へ。
処理業界をリサイクルの理念と技術で牽引してきたパイオニアの物語。

固形燃料RPFや高品質ペレットの開発製造、食品廃棄物のメタン発酵・発電、業界を底上げする法整備への尽力……

廃棄物こそ“サスティナブル資本主義”を支える宝ー—

第一章: 廃棄物の世界に出会う
第二章: リサイクルに目覚める
第三章: 何でも一番がいい
第四章: 更なる発展へ
第五章: 業界の未来

「家業から企業へ、そして資源循環型産業へ−—」
高度成長期から始まる静脈産業の苦難と希望の歴史がここに

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Posted by ブクログ

し尿の処理から始まり、産業廃棄物処理の世界で大活躍した人の話です。ちなみに産業廃棄物処理は資源循環産業というらしいです。血液に例えて静脈産業とも。原発の話でも日常生活でももっともっと脚光を浴びても良い業界だと思うのですがどうでしょうか。

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2021年12月27日

Posted by ブクログ

石井 邦夫氏は1980年代初頭から、市川環境エンジニアリングという会社の社長として国内でも最先端のプラスチックリサイクルに取り組んだ、その先駆者である。同氏は2018年に志半ばで若くして他界。享年60代前半だった。本書は、その半生を綴ったもの。

私は本書を読むまでよく知らず、とある仕事でプラスチックリサイクルなんて本当に必要なのか。亀の鼻にストローが刺さった画像が動物愛護団体に取り上げられ、プラスチック悪しきというムードが増長しただけなのではと。そう思いながら文献を漁っていて辿り着いたのである。

結局、プラスチックやその他廃棄物から固形燃料(RPF)や高品質ペレットの製造に注力し、ペレット製造や食品廃棄物のメタン発酵による発電事業も展開し、これにより市川環境エンジニアリングはグループ売上150億円規模に拡大したらしい。同氏は、2010年には全国産業廃棄物連合会の会長に就任。産業廃棄物処理業を「資源循環産業」として位置付け、法整備・振興を推進して、業界全体を後押ししたという功績をもつ。

「廃棄物」を“新たな資源”と見なして再設計することで、単なる処理業の枠を超え、環境ビジネスの可能性を切り拓いた人物。彼の残したモデルが今日のサーキュラー・エコノミーの潮流と重なっている。

ー コンペは処理料金だけではなく、テーマパークから排出される廃棄物をどのように処理するかも選択肢に入れ、企画書を出して競うことになっていた。テーマパークの片隅に設置したごみステーションにごみを集め、可燃ごみは民間の処理業者に、不燃ごみは最終処分業者に引き渡すというのが通常のやり方である。でもそれでは勝てない。そこで石井は廃棄物処理の一括管理を提唱した。テーマパークの中で瓶、缶、古紙などは資源として業者に売却し、残った可燃ごみはテーマパークの敷地内に焼却炉を設置、焼却する。そして灰と不燃ごみは民間の処分場に搬出するというものだった。焼却炉をテーマパークの中に造るというのは斬新な発想だった。

ー プラスチックのリサイクルの実践がこの発想を生んだ。石井の側近の部長を中心に具体策を練り、企画書をつくった。焼却施設は大事をとって一日に三〇トン燃やせる規模にし、建設費を見積もると一〇億円になった。それは会社の一年分の売上に匹敵していた。コンペには商社やプラントメーカーも含め一五社ほどが参加したが、リサイクル重視の一括管理による方式を唱えた石井がコンペに勝った。テーマパークの幹部に「企画の内容がよかった」とほめられた。四月中旬に開かれたオープニングセレモニーに晴れ晴れとした石井の顔があった。

千葉のテーマパーク。本書で名前は明かされないが、恐らくあそこだろう。知らない世界を知ることが出来た。

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2025年06月09日

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