【感想・ネタバレ】「不確実性」超入門のレビュー

あらすじ

「想定外」が避けられないなら、
私たちはどう備えればいいのか。

リスクと向き合い続ける金融市場のプロが、
不確実性の本質とそれに対処するための方法論を、
幅広い事例とともに解説。

「想定外の時代」をサバイブする必須の教養書。

なぜ一流の学者でも市場の乱高下を予測できないのか。
コロナショックは本当に予測できない事態だったのか、
なぜもっとうまく対応できなかったのか……。

複雑化する現代社会では、不確実性の影響はますます大きくなっている。
世界にそもそも備わっている本質的要素である不確実性をよく理解し、
その性質を前提とした新たな世界の捉え方を伝える決定版。

※本書は『不確実性超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン /2016年4月)を文庫化にあたって大幅加筆をしたものです。

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Posted by ブクログ

評価が低いが…

本書で耳タコレベルで何度も言っているように不確実性に対してそれ以上もそれ以下もなくて、常にそれはランダムなのだから“自分が”いかにそれに対処するかでしかない。
もっと深いことを知りたいなどと評している人はたぶん投資でガチで聖杯を探している人だと思う。
私はそんなものはないというスタンスなのでこれ以上そうした方々へはなし。

本書の感想としてはトレーダーならば必読の書だと思う。
十人十色リスク値が違う以上、万人にフィットするものなど存在するわけがない。
だからこうした“基礎レベル”を耳タコで解説している書籍が重要となってくる。

これ以上説明しようのない事象に対して正解を求めることはナンセンス。

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2022年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「不確実性」とは何か?

本書『「不確実性」超入門』は、金融市場のプロフェッショナルである田渕直也氏によって執筆された、経済や投資における「不確実性」というテーマに真正面から取り組んだ一冊である。筆者はリスクと不確実性を明確に区別し、我々が日常的に用いている「リスク」という言葉の裏にある曖昧さに光を当てている。

経済学やファイナンスの世界では、「リスク」は確率分布が既知であるもの、「不確実性」は確率分布すら不明なものとして定義される。しかし多くの投資家や経済主体が直面しているのは、実際には「不確実性」の方である。田渕氏はこの点に強く着目し、我々がどのようにしてこの不確実な世界に適応し、判断を下すべきかについて、多面的に論じている。


経済や投資における「モデル」との向き合い方

本書で特に印象的であったのは、「モデル依存性」に対する警鐘である。現代の経済学や金融工学は、多くの数理モデルに依存して構築されている。しかしながら、これらのモデルは常にある種の仮定の上に成り立っており、現実の不確実性を完全に捉えることはできない。

田渕氏は、モデルを使うこと自体を否定しているわけではない。むしろ、モデルの限界を理解した上で、モデルを「使いこなす」ことの重要性を説いている。すなわち、モデルが示す結果を鵜呑みにするのではなく、それがどのような前提に基づいて導かれたものかを問い直し、自らの判断力を常に研ぎ澄ます姿勢が求められているのだ。


「意味のある仮説」と「意味のない予測」

また、筆者は予測の限界についても率直に語っている。特に、金融市場やマクロ経済の将来を予測することがいかに困難か、そしてそのような予測に依存することがどれほど危ういかを具体的な事例を交えて説明している。

例えば、過去のデータを基にした回帰モデルによる株価予測は、一見説得力があるように思える。しかし、市場の構造が変われば、過去のデータに基づくモデルは容易に無効化される。田渕氏は、未来を「正しく」予測するのではなく、「不確実性の存在を前提として行動する」ことの方が、長期的に見てはるかに合理的であると説く。

このような視点は、FIRE(経済的自立と早期退職)を志す読者にとっても非常に重要である。なぜなら、FIREの実現には将来の資産運用が大きく関わってくるが、その運用成績は当然ながら不確実性の影響を強く受けるからである。


不確実性の中でどう行動するか

本書の中核にあるのは、「不確実性に満ちた現実をどう生きるか」という問いである。筆者は、確実な知識や予測に依存せず、むしろ不確実性を織り込んだ思考と行動をとるべきだと主張する。

その一つのアプローチが「オプション的思考」である。これは、将来の複数の可能性を考慮しながら、柔軟に対応できる戦略を選ぶというものである。例えば、一つの投資先に全資産を集中させるのではなく、複数の資産に分散投資を行い、それぞれの動きに応じて調整を加えていくことが、オプション的思考の一例といえるだろう。

また、筆者は「ナラティブ(物語)」の力についても触れている。人間は本質的に不確実な状況を完全に理解することができないため、ナラティブを通じてその状況に意味を与えようとする。だからこそ、我々がどのようなナラティブを信じ、行動に反映させるかが、極めて重要なのである。


本書が示すFIREへの応用

『「不確実性」超入門』は、単なる金融や経済の専門書ではない。それは、不確実性をどう理解し、どう行動するかという、普遍的かつ実践的な哲学書でもある。

FIREを目指す者にとって、不確実性への理解と対応は生命線である。将来の市場動向、インフレ率、生活費の変動、制度の変更など、FIREの成功を左右する要因はことごとく「不確実」である。そうした中で、自らの判断を下し、戦略を調整し続けるには、本書で述べられているような思考法が不可欠である。

「未来を予測することはできないが、未来に備えることはできる」。本書を読み進める中で、この一文が胸に深く刻まれた。これはFIREを志すすべての人への力強いメッセージである。


まとめ

田渕直也氏の『「不確実性」超入門』は、経済や投資における「不確実性」という概念を体系的に解説しつつ、その本質的な意味と向き合う方法を提示した良書である。モデルの限界、予測の不完全性、そして「物語」の力といった観点から、不確実性の中でどう行動すべきかを示してくれる。

FIREを含む長期的なライフプランを描く上で、本書が与えてくれる洞察は極めて大きい。不確実性を恐れるのではなく、受け入れ、それを前提に行動する姿勢こそが、変動の時代を生き抜く鍵となるであろう。

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2025年05月30日

Posted by ブクログ

なぜ世の中は不確実なのか、投資を題材に確率論と人間心理から解説する良書。入門的な内容で、初心者の自分にもわかりやすくてちょうどよかった。
投資でよく語られる「長期分散」がなぜ有効なのかとても腑に落ちた。また偶然にも『失敗の科学』や『サイコロジーオブマネー』と合わせて読んだことで、解像度も高まったのでよかった。

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2024年02月22日

Posted by ブクログ

不確実性とは何か、それは予測できるものなのか、そもそも予測とは何か、不確実性にどう向き合えばいいか。あまり深く考えてみたことがないようなことであったが、それを身近な株や歴史的事実などの事例をもとに考えることができ、面白かった。

定量的に予測できるものも当然あるが、できないものも多い。AIでできるようなものでもない。予測は単に、不確実な仮説に過ぎないもので、予測すること自体が難しいものである。
予測が当たらない、間違ったりすること自体が問題というわけではない。そもそも予測することができないものに対して予測して対処しようとすることが問題である。
不確実性にしっかりと向き合い、それによる変化に柔軟に対応できる思考と行動が重要である。

また、不確実と言われるような事象が送る原因には、人間の嫉妬や欲望、不安や恐怖といった心理がそれを助長し引き起こされているということ、不確実性と予測には、結局人間の心理が大きく影響しているということも改めて認識する。

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2025年08月30日

Posted by ブクログ

世の中の不確実性を、主にランダム性とフィードバックという面から論じており、超入門というだけあってとても分かりやすく簡潔に説明がされていると思う。

事前にランダム性などが書かれている「ブラックスワン」と認知バイアスやヒューリスティックなどが書かれている「ファスト&スロー」を読んでいたので、その要諦を上手くまとめた書籍という印象で、その2冊の復習のように読めたことは私の中では大きかったが、その2冊を読む前に予習という形で読んでもよいかもしれない。

また、不確実性にどのように対処していくかにも書かれており、その点もとても示唆に富む内容だった。
同一著者による「確率論的思考」も合わせて読むと良いかもしれない。

個人的メモ
・未来=すでに起きた未来+不確実性
・カオス理論
 因果関係に沿っているはずなのに予測不能なふるまいをすること
・自己増幅フィードバック
 フィードバックループ
・長期思考とリスクの限定

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2024年01月09日

Posted by ブクログ

投資に興味ある人が不確実性理解の入門として使うなら悪くないです。
しかし、幅広く書こうとしすぎて、標準偏差や分散すらまともに記載しておらず、あっさりしすぎています。
過去の有名おもしろ事例の紹介が多いため、この本だけでは「雰囲気で分かった気になるけど、実際は理解していない」状態かも。

巻末にあるブックガイドはその分野の良書かつ読みやすい本を取り揃えているため、興味を持った部分だけでも参照したほうが良いですね。

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2023年11月04日

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