あらすじ
魔界と化した「豊穣の海」の真実
海には陸とはまったく異なる社会があり、陸のルールは海では通用しない。そんな「無法の大洋」では、密漁や乱獲、不法投棄のほか、奴隷労働、人身売買、虐待、殺人といった犯罪行為が長年にわたって放置されてきた。本書は、決して一般の人の目に触れることのない、領海外で横行する違法・脱法行為の驚くべき実態を詳細に描いたノンフィクションである。
わたしたちが普段口にしている海産物は、店頭に並んでいる近海物の鮮魚や干物だけではない。冷凍品や缶詰といった水産加工品の原材料の多くは、グローバル化した巨大産業である国際漁業の現場からもたらされている。そして、そのかなりの部分が、目を背けたくなるような過酷な労働や乱獲などによる生態系の破壊によって得られたものだということが、本書にはこれでもかというほど描かれている。日本の消費者が好む海の幸には目に見えないコストがかかっているという「不都合な真実」を突きつけているのだ。
独立を宣言した海上要塞、公海上で行われる人工妊娠中絶、借金のかたに取られた船を回収するレポマンの活動など、知られざる海の実態を克明に描いた『NYタイムズ』ベストセラー。
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Posted by ブクログ
陸で生活する人々は生涯知ることがないであろう、海上の無謀っぷりを追ったルポルタージュ。内容は衝撃的でどんどん読み進めたくなるのだが、無駄に長い文章が若干読みにくい。特に著者の下記の発言には驚いた。『自分は頭が良い特別な存在』という姿勢が文章の端々から滲み出ているように感じる。
「天下の『ニューヨーク・タイムズ』のフルタイムの事件記者である私が社の人材とコネを総動員しても、シンガポールとフィリピンの病理学者を見つけることはできなかった。」
「虐待の話を聞き過ぎると、虐待に対して鈍感になってしまう。さらに悪いことに、虐待というのは画一的なものなので、何回聞かされても毎回同じ話を聞かされているような気分になる。」
アメリカ人でジョージタウン大学を卒業し、天下のニューヨーク・タイムズのフルタイム記者となった著者からすると、低賃金の仕事に飛びつき、過酷な船上で同性からの性的虐待に苦しむアジア人は画一的で哀れな存在に見えるのだろうか。
はたして下巻では、どのように自身のジャーナリズムを満たす旅を続けるのか…著者の人間性はさておき、取材内容は非常に気になる。
Posted by ブクログ
海上は特にEEZ範囲外のいわゆる公海は、一応その船舶の掲げる国籍の司法が支配する場所ではあるが、そこではならず者国家に近い国籍を金で取得してげ、無法の利を貪る企業、海賊が多くいる。現在補給は会場でも行え、小規模な漁船は何年も寄港せず操業を続け、その中では貧しい社会から半ば日本の職業訓練性である話のように騙され連れてこられた人たちがほぼ奴隷のように働かされ、殺人も多く行われている。
Posted by ブクログ
久しぶりに骨太のノンフィクション作品を読んだ。海、特に領海外での実態を生身の取材によって描いた作品。正直読んでいて決してよい気分にはならない。むしろ気分を害するといってもいい。それくらい、過酷な実態を書かれており、ここに描かれている実態が事実なのだという迫力もある。
たとえば、日本の捕鯨船を追うシーシェパードへの同行取材、法律の適用外となる領海外での妊娠中絶船の存在、違法漁船の人権を無視した過酷な労働実態と殺人行為、船を回収する専門家の活動、などなど。
読んでいて気分が悪くなる理由としては、日本が捕鯨活動をしているからでもなく、実際に自分自身が魚を好きで好んで食べているからでもある。魚のフードチェーンについて真剣に考えたことがなかったが、仮に自分が食べている魚が、カンボジアからさらわれた青年が騙されて、船に乗せられ、人権無視で何年も過酷な労働を強いられたうえで得られたものだとしたら、ぞっとしてしまう。
この本を読む前と読んだ後では魚を見る目が変わってしまう。それくらい、インパクトがある本だと思う。