あらすじ
『星の王子さま』は、読み手によって幾重もの意味を受け取ることができる優れた文学作品である。この物語が書かれた第二次大戦下に、著者は「ウワバミ」や「バオバブ」などの記号に何を託したのか。フランス本国での豊富な文献などを参考資料として附した、『星の王子さま』研究の必携書。
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Posted by ブクログ
『星の王子さま』は「童心」について書かれたものであり、厚顔な錯覚にすぎなくても「童心」が残っていると思うことで誰でも著者を自分の味方にすることができる。ほかならぬ当人が告発されているにもかかわらず。
冒頭からこのような強烈な皮肉を浴びせてくる。なぜ皮肉なのか。『星の王子さま』を読んだ人の多くは「童心」について書かれたものだと思うからだ。
しかし塚崎氏はそのような読み方を作品そっちのけの読みだという。作品のなかで何度も批判している。
塚崎氏は当時の社会状況、つまり第二次世界大戦に注目する。するとこの物語の印象は大きく変わる。ボア、バオバブ、薔薇のトゲなどにはちゃんと意味があると考える。
私が深く考えずに読み進めたところにこんな深い意味があったのかと、とても感動した。もちろんサンテグジュペリが何を考えていたのかは知るよしもない。しかし豊富な資料から考えぬかれた意見は鋭くて説得力もある。また塚崎氏の読書論も興味深い。