あらすじ
人類 vs AI。バイデン、マクロン、ラスムセンら世界の要人に助言を与えてきた著者が書き下ろす、あらゆる情報が信用できなくなる未来。
AI技術の進歩により、行ったこともない場所で、やっていないことをやり、言っていないことを言っている、ニセの動画を作れるようになった。腐敗した政治家や悪質な国家、テロリスト、犯罪者が用いれば、「ディープフェイク」は民主主義と個人の自由を脅かす新たな武器となる。そして世界中の情報が、危険で信用できない「インフォカリプス」の状態になる。本書は、国際的な政治とテクノロジーに関するアドバイザーとして活躍するニーナ・シックによる、未来への鋭い警告だ。
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Posted by ブクログ
現在、私たちが置かれている誤情報・ニセ情報がもたらす危機について、端的に表す言葉としてインフォカリプス(情報の終焉)と定義し、これについての現状を述べた本。
現在は写真や動画を気軽に手に入れることができますが、私たちは、一見正しく思われる音声や画像素材を本物だと信じてしまう傾向があるそうです。これを心理学者は「処理の流暢性」と呼び、人は無意識に、脳が素早く処理できる情報を肯定的にとらえると説明しているそうです。
写真は何度か見ていると、処理の流暢性を補正する働きがでるそうですが、動画はまだそうなっていないようで、このような中、ディープフェイクと呼ばれるAIによってつくられる本物と見分けがつかないくらいの精巧な動画が世の中に混乱をもたらすリスクについて、最終章の手前まで滔々語られるので、とても暗い気持ちになります。
ロシアの分断作戦による米国の大統領選挙の混乱だけでなく、混乱そのものが一般市民にも危険迫ると説いていることも輪をかけて暗くなりましたが、最終章でエストニアの事例を見て、ファクトチェックの重要性を改めて認識しました。