あらすじ
幽霊が見える大学院生・橋野は、この世に未練をのこしている彼らのために何かできないかと模索する日々を送っている。
ある日、さまよっている女性の霊を追いかけて入った能楽堂で比良坂紅苑と出会う。
そこで比良坂の舞によって幽霊が成仏する瞬間を目の当たりにしたのだった…。
恋人に自死したと伝えてほしいと頼む男の霊、別の人物の腕をもつ異形の霊、同じ松が生えている対岸の家を見つめる老人の霊……彼らが抱え込んでいる想いとは?
魂を浄化する力をもつ能楽師とおせっかいな大学院生が幽霊がかかえる謎を解く美しき幽霊譚
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Posted by ブクログ
めちゃくちゃ幽霊と対話してるけど、周りの目の描写がないのは、一応時と場所を選んでるんだろうか。じゃなきゃ、絶対そっち方面で有名になってるよね。
最後のお話、せつないねぇー。
Posted by ブクログ
お能の舞台の空気感、「異界」感を文章だけでこれだけ表現できるのは凄い。
読んでいる間、昴が感じていたであろう空気を肌で確かに感じていた。
幽霊が生きている人間と同じように雄弁に語るのにも驚いた。
ましてミステリのごとく謎解きをしてみてくれないかと言ってくる幽霊がいるとは。
そんな彼らのために、幽霊と会話することしかできない昴が、それでも首を突っ込んでいくのは、お人好しだけでは済まない何かがあるのだろうなとは思っていた。
馬鹿正直に真正面からぶつかっていく、お人好しすぎる昴が抱えていたもの。
それが少し分かるのは、終盤になってからだ。
何となく幽霊を感じることはできても見えない、でも成仏させることはできる能楽師も変わり者。
喋りがあまり統一されていないのも可愛かったが、抱えていた闇は昴より余程ひどかったように思う。
彼も救われたかった者の一人だ。
幽霊を能で成仏させてきた彼が救われるのは、これからになるのだとは思う。
昴が抱えていたものに折り合いをつけるのも、これからのことかもしれない。
でも、少なくとも二人の未来が暗いものではないことを感じることができてよかったと思う。
そんな希望を持てるラストだった。