あらすじ
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ここちよい風鈴の音の秘密は、夏の思い出
風鈴の音色が大好きななみこは、ある日やってきた妹猫にさそわれて、風鈴工房を訪ねました。そこで、風鈴職人をしている兄猫から風鈴の音の秘密を教わるのです。
・文/かんのゆうこさんからのメッセージ
今から15年ほど前、私はデパートの郷土展で、ひとつの江戸風鈴を手に入れました。紫陽花の絵が描かれたその風鈴を、私はとても気に入り、毎年夏がくるたびにベランダにかけて、ガラスの揺れる涼やかな音を楽しんでいました。そうしていつか、この美しい風鈴の物語を書いてみたいな……と、ひそかに思っていたのでした。
少女と四季ねことの不思議な出会いと交流を描いた「四季ねこ えほん」シリーズも、あっというまに三作目となりました。今回出版される「なつねこ」は、日本の夏の風物詩、「風鈴」の音の秘密を描いた、幻想的なお話です。表紙をご覧いただくとわかるように、今回はなつねこだけではなく、とてもかわいらしい妹猫が登場します。脇役ながら、とても大切な役割を担います。この子の存在にも、ぜひご注目ください。
読み聞かせ:5歳から ひとり読み:7歳から
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感情タグBEST3
Posted by ブクログ
かんのゆうこさんの絵本ですね。
絵は、北見葉胡さん。
まいとし なつになると、なみこの いえの
のきしたには、ふうりんが かけられます。
なみこは、ふうりんの おとが
だいすきでした。
「あの おとは、かぜが うたを
うたっているんでしょう?」
なみこが おかあさんに たずねると、
「あら、あれは ガラスの ゆれる
おとよ。」と いいます。
けれども なみこには、ガラスの ゆれる
おとの おくから、すきとおった かぜのうたが
きこえる きがして なりません。
そんな あるひ ゆうぐれのこと。
なみこが いつものように、
すずしげな ふうりんの おとに
みみを すましていると、
にわの むこうから、「チリリリン……。」と、
すみわたるような おとが
きこえてきたのです。
ふしぎに おもって、そとへ でてみると……。
そこには、ゆかたをきた かわいらしい ねこが、
ふうりんを かたてに さげて、
ちょこんと たっていたのです。
ねこは こなつと いいます。
なみこを ふうりんの おみせに
さそいに きたのです。
なみこの、冒険の始まりです。
ふうりん作りの、猫の兄妹が、可愛らしく温かいファンタジーを感じますね。
北見葉胡さんが、ほのぼのと夜のお店をメルヘンで飾ります。
四季のシリーズですね。夏に涼しげな装いがピッタリと楽しめます。風鈴がほしくなりました(=^ェ^=)
Posted by ブクログ
夏の風物詩である風鈴。
なんとも言えない軽やかな涼し気な音に癒される風鈴。
毎年夏になると軒下にかけられる風鈴の音が大好きな、なみこ。
なみこは、「あのおとは、かぜが うたを うたっているんでしょう」とおかあさんにたずねるけれど
「あら、あれは ガラスの ゆれる おとよ。」という。
ある日、庭のむこうから聞こえてくる音に誘われて
出ていくと、こなつというねこが風鈴工房へ案内してくれて、にいさんのなつねこにかぜのうたの話を聞く。
ひかりのつぶをあつめて作るということを…
それは透き通ったやさしいこえでうたっていた。
風鈴の音、大人ならおかあさんと同じ答えをしていただろう。
だけどなみこは、うたに聞こえると…
そう思えばとても夢のある話で、幻想的ですらある。
感受性が豊かでいろんなものを秘めている子どもにとっては、素敵なうたなんだろう。
Posted by ブクログ
この絵本は、子どもが風鈴に思い描く素敵な感性と、世界に於ける人と自然との繋がりを見事に共鳴させており、時にファンタジーは子どもの想像力から生まれたのかもしれない、そんな素晴らしさを改めて実感させてくれます。
女の子「なみこ」は、毎年夏になると家の軒下にかけられる風鈴が大好きで、そこから響き渡る音には特別な思いを抱いていました。
「あの おとは かぜが うたを うたっているんでしょう?」
「あら、あれはガラスの ゆれる おとよ」
お母さんにそう言われても納得できない、なみこは、ある夕方、庭の向こうから「チリリリン……」という音が聞こえたので、そこに行ってみると、浴衣を着た可愛らしい猫が、風鈴を片手に提げてちょこんと立っており、その猫「こなつ」によると、その風鈴は兄さんが作ったもので、もしよかったら、うちの風鈴作りを見に来ませんかと誘いを受けて、なみこはどうしても聞きたいことを我慢しながらも、喜んでついて行くことに決めました。
北見葉胡さんの絵は初めて見たが、表紙の幻想的な絵から、日常的な扉絵へと変わる意外性のある始まり方が上手く、その見せ方も、扉絵とその次の見開きの絵を正反対の方向から見せながら、スイカを食べる前と食べた後で時間の経過もそれとなく知らせていて、更に部屋の小物たちを丁寧に描いている中(工房の猫型のかまども印象的)、風鈴とお似合いの夏の風物詩といえば、ぶたの蚊取り線香という押さえるべき点も押さえている中、植物のあまりに直立した感じにやや不思議な感覚を抱かせる、そんな懐かしくも幻想的な世界観に惹き付けられて、こなつについてお店に向かって歩くなみこの姿は、夕方のほのかに茜射す空景色もあって、どこかお祭りに行くような期待感に満ちている中、ついに風鈴を作った「なつねこ」と出会います。
この絵本を読んで、私が心を動かされたのは、風という自然の存在にとても親しみやすさを与えながらも、それがまるで子どもの人生を表しているように感じられたことです。
その擬人化したように描いた風の存在は、まるで子どもが遊びに出かけていって、やがて帰ってきては、たくさんの素敵な思い出話を聞かせてくれる、そんな姿と重なるものがありました。
そして、そんな思い出たちはキラキラとした輝きに満ち溢れた、かけがえのない大切なものであり、それが『かぜのうた』と結び付いたことにも肯ける、風鈴の涼やかで心地好い透き通った一つ一つの音のきらめきは、まるで子どもの純粋な美しい世界そのものを表しているようでもあり、風鈴の音にどこか懐かしい響きを感じさせるのは、今も昔も存在する風が、かつての私の思い出を運んで来てくれているからかもしれない、そんな共鳴できるものを感じさせてくれた、自然と共に生きる素晴らしさなのだと思います。
「あきねこ」「ふゆねこ」「はるねこ」と続いてきた、かんのゆうこさんの『四季ねこ』シリーズも、本書で完読となりました。
どの作品もそれぞれの季節と密着した、猫と子どものちょっと不思議な心温まる交流を知ることによって、子どもが猫に対して抱いている特別な思いを実感しながらも、猫が子どもに対して、そうした思いを抱いてくれていればいいなという願いを叶えてくれた印象に加え、こんな不思議な状況も猫だったらあり得るのかもという気持ちとなったことに、改めて猫の持つ神秘性を感じさせてくれました。