あらすじ
「入村者はみな必ず幸福になる。来たれ、多幸村へ」
栃木県北部の芳賀野村の移住推進課に勤務する雨貝愛子は、そんな惹句の新聞のPR記事を目にし、疑念と職務上の憤り、そしてわずかな期待をもって長野県にある多幸村を訪れた。
愛子が村までの道中に考えた仮説は、村人がお金か脅迫、あるいは宗教による行動規制、そうでなければドラッグを含む多幸感を沸き立たせる成分を含む何かを村人が接種しているというものだった。
伝染病や風土病まで思いをはせた愛子に対して、村人は皆、一様に親切で愛想がよく、幸福そうに見える。
夫と息子を事故で亡くした愛子にとって、移住すれば幸せになるという話はとうてい納得できるものではない。
理由を探している中で、村では不審な事故死が相次いだ。自身も疑われる中で、愛子はさらなる事件に巻き込まれる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
06月-07。3.0点。
栃木の村で過ごす主人公。長野県のある村で「住む人、移住してきた人、皆が幸せな村」という記事を見つける。村の復興を目指す主人公が、幸せな村へ行き、調査すると。。
設定が結構面白かった。中盤からちょっと専門用語が多い気がしたが。
Posted by ブクログ
栃木県の村の移住推進課に勤務する雨貝。かつて、雨貝は農業試験研究所に勤めていたが、上司からのセクハラで辞めた経歴がある。どうやったら移住者が来るか悩んでいた時、全国で注目されている長野県の多幸村を訪れることにした。そこは、村人や移住者、皆幸せというのである。疑い深い雨貝は、多幸村の移住推進課に訪問し、かつて研究所に勤めていた進藤と再会した。この村の秘密とは?
取材していると、ある事件に遭遇することになる。
2時間サスペンスを読んでいるようなキチッとした起承転結がありながらも、色んな要素を散りばめて、最終的にはうまくまとまっていて、楽しめました。
「入村者、みんな必ず幸福になる」という怪しさ抜群の村でしたが、真実を知ると、より不気味さが増した印象がありました。
作品の雰囲気としては、あまりシリアスさや不気味さの雰囲気はなかったのですが、事実だけを聞くと、怖さがあって、正体となるモノの恐ろしさを改めて感じました。
ミステリーとしては、深掘りせずにサラッとしている印象がありました。雨貝は、村人とのインタビューや昔の恩師などを訪ねたり、事件の推理をしたりと本格的に行動しているのですが、文章の影響なのか、全体的に薄い印象がありました。
事件に共通している一方通行の足跡という密室系にミステリーとしてはたまらない案件なのに結果として、尻窄み感があって、もう少し話を広げて欲しかったかなと思いました。
ただ、作者の得意分野となる「薬学」では、詳細に描かれていて、リアルさが際立っていました。言いづらい言葉や聞き慣れない名前が多く登場しましたが、恐いということは伝わりました。
展開としては、最後の最後まで真実が隠されていて、目が離せませんでした。最後は、ある人物の手紙で終わるのですが、衝撃を受けただけでなく、色んな意味で繋がっていたことに驚きがありました。今までとは違った見方が発生するので、雨貝としては、悲しみがだいぶ増したのではないかと思いました。
うまい話や完璧な話には、必ず裏がある。100%良い話と聞くと、どうしても疑ってしまう傾向に人間の醜い部分が出てしまいますが、同時に「普通」の感覚でもあるかもしれません。
よく吟味して、より良い幸福を掴めるよう、日々精進していきたいです。