あらすじ
17歳の女子高生、安藤麻衣子が通り魔に刺殺された。その同級生・直子を娘に持つ野間は、童話雑誌で挿絵などを描くイラストレーターだ。彼がこれから絵を手掛けようとしていた雑誌への応募作『ガラスの麒麟』の、安藤麻衣子は投稿者でもあった。事件の日から娘・直子は、安藤麻衣子が乗り移ったかのようなことを口走ったりして学校へ行かなくなる。心配な野間は安藤麻衣子の葬儀で出会った養護教諭の神野に娘のことを告白する。神野は、直子のことを知り安藤麻衣子のことにも詳しい女性だった。とびぬけて美しく、すべてに恵まれていた麻衣子の何が死を招き寄せたのか。彼女の書いた『ガラスの麒麟』のように、精一杯首を伸ばし背伸びして、だからとても不安定で壊れやすく細やかな少女たち。その心理を温かく描き、六つの物語を通じて真相に近づいていく連作ミステリーの傑作! 日本推理作家協会賞受賞作。
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Posted by ブクログ
97年の出版です。加納朋子さんはミステリー作家ですが、殺人事件とは無縁の「日常の謎」を解く展開が特徴と思っていました。
しかし本作は、美しく聡明な女子高生が通り魔に殺されたことから始まる、6編からなる連作短編集でした。
章ごとに語り手が変わり、それぞれ小さな謎とその解決があります。そして、各章で登場人物が交錯し、最終章で大きな謎が解決される構成になっています。
ミステリーとしての謎・伏線回収に、スッキリしない感覚をもちましたが、人間心理の謎・深さ・共感の側面からすると、著者の願いが込められた温かい作品になっていると感じました。
全編を貫いて、女子高生本来の青春を謳歌する〝動〟と、ガラスのように脆く壊れ易い〝静〟にスポットを当て、「どうしようもなく独り」という揺れる心理描写は見事です。
ミステリー仕立ての文学作品として読むことをおすすめします。
Posted by ブクログ
❇︎
通り魔に刺殺されて一人の少女が殺された。
17歳の安藤麻衣子は成績も良く、周囲からも
慕われ、何不自由なく暮らす誰もが羨むような
美少女だった。
なぜ麻衣子は、殺されてしまったのか。
犯人が捕まらない中、執り行われた葬儀で
野間は一人の女性と出会うが、その女性は
娘の直子が通う高校の養護教諭の神野だった。
クラスメイトの死、極度の不安と緊張のせいか
言動がおかしくなった直子。
野間は偶然あった神野に助けを求めて相談する。
誰もが羨望する麻衣子は何を考え、過ごし、
その短い人生を生きてきたのか。
野間と娘の直子、神野を話の軸に据えて、
混沌、矛盾がない混ぜになった麻衣子の
心理に迫ります。
一つひとつの話が連なり絡むミステリー。