【感想・ネタバレ】「ポスト・アメリカニズム」の世紀 ――転換期のキリスト教文明のレビュー

あらすじ

20世紀をリードしたアメリカ文明も、近年、動揺を来すようになった。9・11同時多発テロ、ポピュリズムの台頭、COVID‐19の世界的流行、そしてGAFAに象徴されるテクノロジーの支配……。アメリカニズムは今、どこへ行こうとしているのか?そもそも、その根底には何があるのか? 現代社会を突き動かす「総かり立て体制」、社会に底流し続け、時に政治をも動かす宗教。この二つの視軸から、転換期のキリスト教文明に光を当て、「ポスト・アメリカニズム」の世紀を展望する渾身作である。

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Posted by ブクログ

今、私たちが生きているのはどんな時代なのか、というか、タイトルのようにどんな世紀なのか、もしかするともっと長い時間軸での議論なのかもしれない。

学問の分化が進んだ現代において、誰もそんな大それた文明史、しかも直近の時代までを対象とした文明史を書こうという人はいないだろう。そういった無謀な試みなのだが、かなりの説得力を持ったものだと思う。

ポスト・アメリカニズムというからには、アメリカニズムとは何かから始める必要があるわけで、概ね20世紀の始めくらいから話は始まる。当時の資本主義、フォーディズムといったところを踏まえたマックス・ウェーバーのお馴染みの「プロ倫」の議論が紹介、そして再解釈される。そして、その「脱魔術化」の意味が問い直される。

ウェーバーの議論は、現在の状況を説明するにはやや賞味切れな感じがある。なぜなら、今起きていることは、再魔術化というか、世俗化ならぬ、宗教の影響の増大なのだ。

ということから議論は後期ハイデガーになる。まあ、よくわからないハイダガーの議論を読み解きながら、それが現代をよりうまく説明できるということになる。この辺りの議論は、よくわからないながら、なかなかにスリリングだ。

という大きな読み取りを踏まえつつ、アメリカを中心に今起きていることの再解釈がなされ、かなりの説得力を持つように思った。

ハイデガーという大きな話から、視点がちょっと現代のさまざまな出来事にフォーカスが移りすぎていて、話しが飛んだ感じもするが、アクチュアルに感じることができるのは良いことかな?

未来に向けてという意味では、2021年出版で、Covid-19の影響がまだ多い時期の本で、その辺りが少し大きめに反映している感じもあるが、Covid-19は今私たちがいる世界の問題点を明確にしたと考えればそのことは大きな問題にはならないかな?

第二次トランプ政権のスタートにあたって、生じている不条理を読み解くのにかなりパワフルな議論だと思う。

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2025年02月14日

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