【感想・ネタバレ】「墓じまい」で心の荷を下ろすのレビュー

あらすじ

「家」も「墓」も代々続いていくという考え方は
幻想でしかなかった
墓守が消失する「無縁墓」社会にあって
私たちはいかに死者を葬ればいいのか

地方の過疎化と高齢化は、
「増えすぎた墓」を世話する墓守の不足を急速に招いている。
満足に世話のできない遠方の墓を持て余し、墓じまいを行う人も増えてきた。
なぜ私たちはこれほどまで、お墓の存在を「重い」と感じるのだろうか。
墓じまいの実際とともに、
日本人にとっての墓の歴史、先祖供養のあり方、死生観の変化などにふれながら、
私たちが墓に執着する理由を解き明かしていく。
また、墓じまいにまつわる「寂しさ」や「迷い」、「わずらわしさ」の淵源に迫り、
「墓」から自由になるヒントを提示。
今後、「無縁墓」が増えていく時代の、新たな墓のあり方を考察する。

(目次)
第1章 私の体験した墓じまい
・墓守が不足した社会で、墓じまいは誰もが直面する問題・・・など

第2章 墓じまいにまつわるわずらわしさと解放感
・そもそも「家」というものは永くは続かない
・檀家制度がもたらす菩提寺とのトラブル・・・など

第3章 どうすれば墓じまいはできるのか
・日本社会で増え続ける無縁墓と改葬
・墓じまいの手続き、進め方・・・など

第4章 現在のような「墓」に長い歴史はない
・都市周辺の山に葬った平安時代の埋葬地の光景
・火葬の普及が庶民の墓造り、墓参りの習俗を生んだ・・・など

第5章 「故郷・実家・墓」の文化はほんの一時代のものだった
・誰もが墓をもつようになったのは最近のことである
・江戸時代から広まった寺と檀家という関係・・・など

第6章 私たちがもつ残された骨へのこだわり
・仏教、キリスト教も「遺骨」によって大いに発展した
・庶民にとっての供養の場は、もともと墓ではなく仏壇だった・・・など

第7章 墓じまいへの「ためらい」はどこからくるか
・墓はただの石か、魂が宿っているのか
・墓じまいは故人の思いに背くことになるのか・・・など

第8章 私たちにとって墓がもつ意味は変わった
・死後の魂の行方に関心を示さなくなった現代人
・親族たちが唯一、一堂に集まれる場としての墓の価値・・・など

第9章 墓じまいで心の荷を下ろす
・墓造りより、墓じまいのほうが日本人の無常観にしっくりくる
・「家」というものの重さから自由になる・・・など

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Posted by ブクログ

ネタバレ

つるりとした御影の墓石を頂く○○家先祖代々の墓。あれは実は代々受け継がれてなどいなくて高度成長期に広まった文化の一種なのである。そもそも代々続かないのは当然であり、必要以上に重く考える必要などない、だから安心して墓じまいをというのが著者の立場。なるほどと思った。確かに、誰でもみんな建てるようになり建てて一人前とされたものがやがて次代で・・という点で郊外のマイホームみたいなものなのかもしれない。深刻に悩んでいる人にとっては少しは気が楽になれる本だと思う。

P33 これから長い年月が経てば、いつかは私を知らない子孫が出てきます。わたしは忘れ去られて、その時ようやく「ご先祖さま」とひとくくりで呼ばれるようになるんです。それが無名性の獲得です。(上野誠氏)
P90 どの家でも墓を作り、墓参りを行うというのは、火葬が普及してからの習俗なのです。

P103 (カロートは日本語)「唐櫃」が転訛した言葉であると説明されています。【中略】東日本と西日本で遺族が持ち帰る遺骨の量に違いがあるのです。

P133 柳田(国男)は(老人が自分は一族の御先祖になると語ったことに)これまでの日本人が求めてきた成功のイメージが示されていることに感銘を受けたと述べています。

P137 先祖供養が稲作農家には好ましい信仰の形態であったとしても、そうした生活をしていない人々にとっては、必ずしもそうではありません。漁家なら漁船を購入してくれた先祖に、町工場なら工場を建ててくれた先祖に感謝の念を抱くということはあります。ところが、それがサラリーマンの家ということになれば、先祖と言われてものそのイメージは鮮明ではありません。

P176 平均寿命が短く、いつまで生きられるかわからない、だから死ぬまで生きようと考えていた時代の死生観を「死生観A」と呼んでいます。それに対して超長寿社会の死生観は「死生観B」です。自分が長生きすることを前提に人生を組み立てていくもので、先のことを常に考え続けていく生き方になります。

P182 長寿が実現された結果、わたしたちの人生は、次第にフェイドアウトしていくものに変化してきました。

P207 人工ダイヤモンドで石を切る技術と中国の安価な御影石の輸入が、立派な墓を建てる慣習、文化を生んだのです。

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2022年04月29日

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