あらすじ
とある一日の朝から晩までの出来事。
街の顔役の金庫から盗み出されたアタッシュケース、そのケースの鍵を飲み込んだ黒猫、忽然と消えた車…。
同じ時間の違う場所、行きつ戻りつ時に衝突するドラマ。
スリルとスピード感あふれる爽快な犯罪群像劇。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ありふれた日常の裏に潜んでいる邪悪な存在たち。彼らは巧妙に隠れ、我々の見えないところで悪事を働いている。そんな「彼ら」と、私たちのような表側の人間たちが知らず知らずの間にクロスオーバーしていく残酷で突飛かつ、ユーモアのあるお話。
知名度が低いがゆえか、おもしろいのにレビューなどが少ないのが惜しまれる程度にはおもしろかった。
序盤は主人公らしい男がトラブルに巻き込まれるクライムサスペンスかと思った。
だが読み進めるうちに本作は特定の主人公はおらず「みんなが主人公かつモブ」という調子で、色々な人が複雑に絡み合うことで物語は進んでいく。
ゆえに読み終わってすぐもう一度読みたくなる、みたいな触れ込みは本当だなと。
あと全然比較にはならないけれど、この現実世界もある意味においては、「人は主人公でもありモブ」だし「何かの物語の一員」に知らず知らずになってるなと思った。それが時に人を残酷にさせたり、人を勇気づけたりする。ぐちゃぐちゃで煩雑な日常が苦しくも楽しい。本作はそんな気にもさせてくれた。
唯一減点するならば、絵が少し癖があって、それが良くも悪くも本作の世界観を形作ってはいるのだけれど。(味だけど読み辛い場面が少しあった。)
総評、買うべし。
本の装丁も洒落ている。カバーと本体で表情がかなり異なる。紙面で読んでほしい。