あらすじ
「この婚約は破談とさせてもらう」。
没落貴族の令嬢であるレティシアは縁談相手の帝国騎士団長フランツ・フォン・アーデルハイドからそう告げられる。
初めて出会って間も置かず告げられた言葉に困惑するが、自分には分不相応な縁談であったと受け入れレティシアは帰宅しようとする。
しかし、帰宅をなぜかフランツに阻まれ・・・
【40ページ】
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天使の羽ばたく音が聞こえたら
武骨一辺倒の唐変木が(漢字を羅列しただけでも仰々しい)、いきなり婚約破棄を告げたかと思ったら、図らずも秘められた想いの発露につながってしまうという実に粋な恋愛譚。
令嬢の立場や主張には、誰もが同情したり共感したり、読者によっては自分自身と重ねあわせたりするだろう。団長の方はというと、まぁ、(皮肉ではなく真意として)ご苦労様ですねとねぎらいたくはなる。ねぎらいたくは。
おしゃべりな脇役陣が物語を盛り上げ、主役達を引きたてる構図もまた、丁寧に計算されていて楽しめた。
まるで、なかなか花の咲かない木にようやくつぼみができて、やきもきしながら『その瞬間』を待つかのような味わいであった。
二人の行く末に祝福を。読者の胸に感動を。