湯之上隆のレビュー一覧
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ネタバレ日経新聞のレビューの評価が高かったので買った。実に面白かった。粗筋を急いで追って斜め読みしたので。二周目はじっくり読みたい。
なぜ日本の半導体産業は凋落したのか?が日立の技術者としての筆者の経験を交えて語られ。読みやすく、スピード感もある。敗北の要因は多岐に渡る。しかし、際立つのは日本全体に蔓延る「病理」とも言うべきものだ。それは、世界のマーケットを無視したガラパゴス気質であったり、高度技術に拘泥した、戦略と決断の欠如でもある。冒頭、「半導体の敗北はゼロ戦の敗北に重なる」と著者は指摘する。しかし、読み進める内に、その敗北はむしろ、太平洋戦争の敗北それ自体とも重なってくるように思われた。「リー -
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2020/4/20第1刷。著者は日立の研究所などにいたジャーナリスト。半導体の世界情勢が非常に詳しく書かれている。半導体の製造工程などについても詳しく書かれているが、専門外の私には消化不良。
本書を読んで世界でのTSMCの重要性は改めてよくわかった。また1980年代に世界を席巻していた日本の半導体がコンピュータ業界のパラダイムシフトについていけず過剰品質の追及を続けサムソンなどの韓国勢に敗北する事情なども書かれている。イノベーションのジレンマの典型例とのことである。
日本のラピダスについてはミッション・インポッシブルだ等かなり批判的なことが書かれている。その後どうなったのかよくわかって -
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EEtimesに掲載されている湯之上隆のナノフォーカスを中心に、米国による対中規制、台湾有事の可能性、半導体にまつわる世界情勢(製造力、車載用半導体不足)、日本の半導体産業に対する警鐘、日本の強みについてまとめて記載した著書。
10.7規制は、2022に中国SMICが7nmの製造に成功し、米国Intelと同水準の技術力となったことが発端であり、中国の半導体開発に歯止めをかけつつ、米国の半導体製造技術の向上を米国は図っている。
ファウンドリービジネスとは、先に生産委託ありきのビジネスである。アップルがこのようなスペックのアイフォンプロセッサーを1年間に2億個、1個100$で作ってくれと言われ -
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半導体を微細化するには天文学的な投資と大量の優秀な技術者によるトライ&エラーの積み重ねによってようやく実現できるのに、微細化に取り残されて40nmの半導体しか作れない状況で、一気に2nmの量産化を目指すのは無謀だということがよく解った。
TSMCの依存から脱するためにファウンドリを育てる重要性も理解できるが、せっかく半導体バリューチェーンにおけるチョークポイントを日本の材料メーカーが占めているのだから、彼らの競争力を強化することで日本をバリューチェーンの中で不可欠な地位に固めつつ、ファウンドリはTSMCなりサムソンなりグローバルファウンドリーズなりを誘致する方が持続可能なんじゃないかと -
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熊本へのTSMCの工場進出と北海道千歳のラピダスの立ち上げによって、日本の半導体はかつて世界を席巻した輝きを取り戻せると思っていた。しかしこの本を読む限りそんなことはとてもあり得ず、とんでもない楽観的妄想に過ぎないことを思い知らされる。そして強いと思っている半導体の製造装置や材料分野もシェアや伸び率が下がり、欧米に追いつかれつつあることも書かれている。筆者は地政学上の課題はあるにせよ、今の国ごとのバラバラな投資競争に対しては相当の危機感を持っている。政府の補助金は熊本や千歳にではなく、まだ辛うじて強さを保っている製造装置と材料分野の一段の強化にこそ注ぐべきであること、そして日本は教育体系を変え
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少し前にシャープが経営破綻したのは何故かということを調べるために、関連の本を数冊読んだ。シャープの場合には、液晶の事業経営の失敗が会社の破綻に結びついた。本書で取り上げられているのは、同じく電機業界であるが、主に半導体である。
かつて、日本の電機メーカーは、DRAMの分野で世界シェアの80%を占めていた。メモリーをやっていた会社も、東芝・富士通・NEC・日立・三菱電機と多く、日本の半導体事業はこのまま高収益が続くと考えられていた。
ところが、今や日本の電機メーカーのDRAMは壊滅状態であり、その後に参入した、別の種類の半導体、SOCでも日本メーカーは存在感を示すことが出来なかった。
日本の半導 -
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ネタバレ日本企業のDRAM全盛期時代に日立製作所に入社、その後エルピーダメモリに出向、日本の半導体産業に警鐘を鳴らし続けている湯之上隆氏の著書。
一言:サムスン強え(いろんな意味で)。ヤクザかよ…。
おもしろかった。以下学び↓
・日本の「イノベーション」=「技術革新」という認識が、イノベーションのジレンマに陥ることにさらに繋がる。
・サムスンは「売れるものを作る」。日本企業は「作ったものを売る」。
・インテルはイノベーションのジレンマに陥り、iPhoneの市場拡大を見誤り、iPhone用のプロセッサへの投資を断った。
サムスンは模倣で伸びた企業。NECからDRAM、iPhoneからスマホのノウハ -
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日本には低コストでものを作る技術者はなく、過剰品質、生産の結果が今日の状況を作り上げたと感じた。またサムスンとの比較のなかで顕著だったことはマーケットインの志向が強いということ。優秀なマーケッターが各国にいることで、その先の顧客の生活習慣まで把握できる。マーケッターの数も桁違いであることや、意思決定が速いことも挙げられる。不良品ゼロ神話もなく、開発量産品体制も日本にはない。
その上で日本の強みは、製造工程の改善や、総合的な擦り合わせ技術、連続的な技術。例えば洗浄装置など暗黙的なノウハウの蓄積を要する分野。
模倣力も大切だと言えるのではないか。
イノベーションは技術力ではなく、マーケットへ -
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日立製作所で半導体技術者として従事していた筆者が、創造的模倣能力を取り戻すことによりイノベーション(発明と市場との新結合)を起こすことの重要性を主張する一冊。メモ。(1)日本の成功パターンには以下の3つの特徴がある。①製造工程に競争力の源泉がある産業。TQCやカイゼンにより製造効率が向上し、競争力となる産業。②高度な摺り合せ(インテグラル)技術が必要な産業。多くの要素技術を組み合わせて総合的な摺り合せを必要とする産業。③持続的技術が必要な産業。(2)日本の半導体製造装置産業において共振化(共退化)が分野がある、日本が強い分野、大日本スクリーンの洗浄・完走、東京エレクトロンのコータデベロッパ、C
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著者は、日立の半導体設計の担当だった人で、日本の半導体の衰退がなぜ起こったかを分析して、その理由を明確にしている。
産業のコメといわれた半導体(DRAM)は、成長が著しい分野だったが、過剰な品質の高耐久性のある半導体を出してある間に、低コストの安い製品に駆逐されてしまったことがよくわかる本だった。部分最適化は得意だが目的が不明確で全体最適化が不得意なことや、技術だけに特化した哲学をもつことは零戦以来の日本の伝統だとも言える。その意味では、これからどうするべきかの指針にもなると思う。
ただ、題名は零戦、テレビなども載っているが、内容は半導体のことが8~9割占めているので、そのつもりで読むとよ -
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2013年発行の古い本だがタイトルに引かれ購入。零戦・半導体・テレビ、とあるが、実際は半導体の話がほとんど。半導体業界や国に対しての批判的な内容が多い。ルネサス幹部と著者との諍いの話などあり、いろいろとバトルしている著者のようである。
ところで著者の著作によく出てくる図で、コンピュータ業界のパラダイムシフトとしてメインフレームから90年代のPC、2010年代のスマートフォンといったのがあるが非常に違和感がある。エンタープライズシステム向けのものとコンシューマ向けのものが混じっている気がする。メインフレームはエンタープライズシステム向けだが、90年代のオープン化の流れはエンタープライズシステム -
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最先端の半導体技術を持つTSMCが、米中どちらにつくかによって、世界のバランス何変わることは明らかだった。
ターニングポイント1
2020年5月14日、TSMCが中国ではなく米国側についた日として歴史に刻まれた。この日、TSMCが米国アリゾナに進出すること、および中国のファーウェイに対して、半導体の輸出を禁じることとなる。
ターニングポイント2
2022年10月7日の米による「10.7」規制。
狙いとしては、軍事技術に使われる恐れがある中国のスーパーコンピュータや人工知能半導体の開発を完全に抑え込むことにある。米国が強みを持っている半導体の設計図ツールやソフトウェアの輸出を禁止する他、製造装置