湯之上隆のレビュー一覧
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半導体有事
著:湯之上 隆
文春新書 1345
半導体の4つの軸についての解説書です
①半導体をめぐる地政学的状況
②半導体の種類:半導体とは一種類ではない、
DRAM:メモリ
スマホ向け:
自動車向け:パワー半導体&アナログ半導体
AI向け
③半導体の製造方法
④半導体産業の現状と問題
半導体は、いまや、戦略物資であり、現代の石油である
気になったのは、以下です
① 半導体をめぐる地政学
米国は、中国経由でロシアに流れている兵器へ転用されている半導体の出荷を止めたい
このために、中国に対して、半導体規制を発動している
・自身しか作ることのできない最先端の技 -
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産業のコメと評される半導体。
かつて世界を席巻していた日本の半導体産業も今は昔と思っていた。
ところが日本には世界的に高いシェアを持つ製造装置や材料があると知り望みを感じるとともに、半導体は完全に世界的な分業なのだなと。
本書ではそもそも半導体とは何か、微細化の効果と技術、製造過程やシェアについて分かり易く書かれている。
台湾に出張する事も多く、嫌でもTSMCの話は聞くし同じ九州に進出となれば商売に絡む色気も無くはない。
筆者はそこに大きな警鐘を鳴らす。
日本で作る目的は、ターゲットはどこかがはっきりしない。
ラピダスは何のために2ナノを作ると宣言したのか。技術の継承もないのに。
ファウ -
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なかなか刺激的な内容だ。自分が開発している材料の一部も半導体産業で代替の効かない部材に使われている。仮に我が社に不幸な出来事が起こって材料を提供できなくなると、TSMCのWO-WLPプロセスが止まってiPhoneのプロセッサが製造できなくなる。TSMCからは間接的に『どうやったらその狭い規格を満足する製品を供給できるのか?』といわざるを得ない無理難題を要求されていて、本書で書かれている事がリアルに理解できた。ただ装置、材料メーカーに国の支援を入れることは反対だ。著者が最後に書いてあるとおり、自然な再生産のサイクルを破壊する。付いていけない装置材料メーカーは市場から撤退しないと健全な進化が起こら
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電子立国日本の中核を担っていた半導体産業の凋落と、サムスンを始めとした新興国の隆盛。その渦中の中にいた、半導体メーカ技術者であった著者による分析と今後の日本の半導体産業への提言が本書。
目から鱗だったのが、半導体産業の凋落の理由。今までのメディア情報で、設備投資のタイミングが遅いことと、アメリカからの貿易不均衡が同時に重なったことだと思い込んでいた。しかし、その本質が職人気質という日本文化の影響で、全体最適を考える経営者が不在で、技術者は部分最適の技術レベル向上に固執するという、典型的な日本メーカの負けパターンだったとは。
しかし、半導体技術開発の困難さが初めて分かりました。その意味で、半導体 -
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1980年代に世界をリードした日本の半導体産業。ところが現在では日立とNECのDRAMの合弁会社エルピーダメモリーは経営破綻し、日立、三菱、NECのマイコンを経営統合したルネサスエレクトロニクスも倒産寸前まで追い込まれるなど、当時の面影はありません。
日本の半導体産業が世界一であった1980年代に日立に入社し、その凋落を目の当たりにしてきた著者が半導体産業の裏側とその凋落の理由を解説。
半導体とはどのように製造されるのか?、なぜマイコンの世界シェアNo.1のルネサスが赤字なのか?、東日本大震災でルネサス那珂工場が被災した時、代替生産がなぜできなかったのか?、日本が強い技術分野と弱い技術分野とは -
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元日立でエルピーダにも在籍した半導体技術者が、日本半導体の敗戦の原因をその内部にいた経験から分析したものである。まずは日本の技術は一流でそこは負けていないという神話の否定がある。少なくともコストパフォーマンスの面で劣っていたことは確かだろう。エルピーダで経験した事実の解説は負けるべくして負けた状況が理解できる。
日本には、イノベーションとマーケティングがなかった、と著者は言う。イノベーションは「技術革新」と捉えられ、本来の「新結合」という意味では捉えられていなかった。マーケティングも「市場調査」と捉えられ、本来の「市場創造」の思考が日本にはなかった。イノベーションとマーケティングはかの日本び -
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日本メーカー、特にソニー、シャープ、パナソニック、NEC、日立、三菱電機などの電機メーカーは、サムスンやアップルなどに敗退している。
なぜ、日本型ものづくりは世界で勝てないのか。その理由を考察した一冊。
筆者の湯之上氏は、日立製作所入社から16年にわたり半導体の開発に従事した、日本のものづくり現場を熟知した人物である。
湯之上氏は、日本企業の問題点は「イノベーション」の捉え方にあると指摘する。
イノベーションは「技術革新」と同義で使われることが多いが、経済学者シュンペーターの定義では、「発明と市場との新結合」であるという。
いくら革新的な技術が生み出されても、それが技術者の自己満足に過ぎず -
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【ポイント】
23/イノベーションとは、シュンペーターの定義:「発明と市場の新結合」
◆「爆発的に普及した技術や製品」 と著者はしている。
55/半導体の量産技術
量産移管の方法には、「コピーイグザクトリとコピーエッセンシャリ」がある。
89/エルピーダはなぜ倒産したか?
→低コストでDRAMをつくることがてきなかったその技術が問題。
つまり、坂本社長の経営者として責任は、低コストでDRAMをつくる技術を
向上させることができなかったことにある。
89/ 30年間変わらなかったDRAM技術力 (25年の耐久性)
93/ 開発と量産の境界がな -
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今まで多くの日本脅威論を読んできましたが、その多くは製造業の実態をご存じない方が書いたものであり、一方で、日本のモノづくりがいまだ健在であるという本を読んで自分を安心させてきました。
特に、ものづくりにおいて、最終製品では外国勢に負けていても、材料や半製品、製造装置のシェアは高く、これが日本の強さであるという論調に私は日本の底力を見ていたつもりです。
この本は、それらを十分に揺らぐほど衝撃的でした。この本の著者は私より3歳程年上で、日立製作所で半導体研究や製造技術に拘った、中身を良く知った方です。彼がはぜ1980年代には世界一だった半導体行が、現在ではそれを思い出せないほど惨めな姿になって -
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JBプレスで連載している日本半導体・敗戦から復興へのシリーズが面白い。そこで10月発刊のこの本が反響を呼んでいると有ったので読んでみた。「失敗の本質」の産業版だなあというのが感想だ。
イノベーションを技術革新と訳すのがそもそも間違いじゃないか?経済学者のシュンペーターはイノベーションを「イノベーションとは発明と市場の新結合」と定義しており、著者はもっとシンプルに「イノベーションとは爆発的に普及した新製品」と定義している。まあ著者の定義だと中毒の山寨機もイノベーションになるのでそれはどうかと思うが、ある意味ではそれも正しい。個人的にはトヨタ生産方式など商品ではなくてもイノベーションと呼んでいい -
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類似テーマの名著、山本七平の「日本はなぜ敗れるのか」に引けを取らない面白さとリアルなインプリケーションの深さと普遍性からいうとどの業界にいる方に対しても「今個人的に一番おすすめしたい一冊」。
2013年秋から妙にサムスン凋落を囃し上げる快哉が鳴り響いてはおりますが、結果論としての生き残った、生き残っていない、勝った、負けたというところで溜飲を下げているようじゃなぁ、と危機感をよけい強めてしまいます。日本の産業がどういう戦略(あるいは「戦い方」)を選ぶにしても、何が弱みでライバル企業はどう分析し、具体的に何をどうしたのかくらいは目をそらさずにいる勇気の有無を問われる内容です。喉元過ぎて熱さを明日 -
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元日立の半導体設計者である湯之上隆氏の最新刊。何冊も読んだが今回も本当に面白い。星5つ。
半導体、電機をはじめとする日本のものづくりが敗戦したのは、世の中の変化パラダイム・シフトに対応することができず、顧客の注文に忠実に耳を傾けるあまり、性能や品質は劣るが『安い、小さい、使いやすい』などの特徴を持った破壊的技術に駆逐される、いわゆるイノベーションのジレンマに陥ったことが原因であると指摘する。今回は、これが当初はアメリカの戦闘機を圧倒していたにも関らず、海軍の言うとおりの仕様である軽さを追求し過ぎたて撃たれ弱いボディとなり、最終的にはアメリカの戦闘機に負けてしまう零戦と同じであると斬る。DRA