伊藤宣広のレビュー一覧
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ケインズは経済学者として、「雇用・理事及び貨幣の一般論」を発表し、マクロ経済学の理論を展開した。本書では、ケインズの研究や業績の背景を1910年代の第1次世界大戦後の戦後処理、金本位制復権問題、1930年代の世界恐慌など、時論を展開する必要に迫られた時代の実践家ケインズを描く。ミクロ的に合理的でもマクロ的に正しいとは限らない「合成の誤謬」となる政治的決断に抗い続けて、マクロ経済の「一般理論」に至った苦悩を描写する。「合成の誤謬」に関して、企業が利益追究のために従業員を軽視し、人件費を節約して非正規雇用を増やすという「合理的」行動をとると、社会の購買力は低下してしまう。人びとが将来に不安を抱き
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Posted by ブクログ
ケインズ経済学の内容紹介では必ずしもなく、「危機の時代の実践家」としてのケインズを描いた好著。「危機の時代」はもちろん第1次世界大戦から第2次世界大戦までの時代を指す。本書で具体的に取り上げられている課題は、第一次世界大戦後の対独賠償問題(「平和の経済的帰結」)、金本位制復帰問題(『貨幣改革論』『貨幣論』)、そして大恐慌の問題である(マクミラン委員会、『一般理論』へ)。最後に『一般理論』とその後についてで締め括られている。
本書に通底しているのはミクロの合計がマクロにはならないという「合成の誤謬」という視点である。この視点自体はともすればもはや常識として忘却されがちであるのだが、当時において -
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ネタバレ[ 内容 ]
「すべてはマーシャルにある」。
ケインズに帰される革新的諸概念の多くは、マーシャル以来ケンブリッジでは共有財産となっていた。
本書は、対立軸を設定しながら、マーシャル、ピグー、ロバートソン、ホートレー、そしてケインズの経済学を読み解き、ケンブリッジ学派を貫く実践志向を浮き彫りにするものである。
現実に応えるための経済理論は、どのように継承され、発展したのか。
時代と格闘した学派をめぐる経済思想史。
[ 目次 ]
序章 理論と現実の狭間で―cool heads but warm hearts
第1章 科学者と説教者―A.マーシャル
第2章 光明と果実の葛藤―A.C.ピグー
第3章