田尻祐一郎のレビュー一覧
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学生のときに日本史用語集で時期と名前と著作を延々と暗記していた
固有名詞が色鮮やかに立ち上がってくる。
その思想は世の中をより良くするための思想で満ちている。
主に儒学・朱子学をテキストとして実に様々な批判や改良を試みて独自の思想を築いている。
どうしたらより正確に判断できるか、どうしたらより便利で豊かに暮らせるか。
現世におけるそのような思いが詰まっている。
誠実なプラグマティズムとでも言いたくなるほどに。
豊穣な近世の格闘を知らずに明治以降の思想を知ることはできないというのは正論だ。
近代的な輸入物である民権、自由、平等、憲法などが比較的短期で理解され定着したのは、
それもまた現世に対 -
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ネタバレ大学受験などで日本史を選択したものなら、お馴染みの名前、中江藤樹、山崎闇斎、熊沢蕃山、伊藤仁斎、荻生徂徠、貝原益軒、宮崎安貞、新井白石、安藤昌益、本居宣長、富永仲基、三浦梅安、司馬江漢、海保青陵、本多利明、佐藤信淵、平田篤胤、etc...。それらの思想家の大まかな思想を、大まかな時代の流れ・系統を整理しつつ紹介してくれる。
受験用日本史だとほんの数行の特徴と生存した時代、代表的書物名くらいしか覚えてなかったりしたので(あるいはもうちょっと勉強したような気もするのだがきれいに忘れたので)、「名前は知ってるけどどういう人かは詳しく知らない故人の親戚」の話を聞いているようで楽しかった。
また、この -
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#再読
#実家に送ってた本シリーズ
本文だけだと山川倫理の引用文多い版の域を免れない印象もあるし、記述の中で著者が自ら再論にあたっての作戦を貫徹できた印象もあまりない。ただし、著者が漠然とながら「江戸という、人同士が長い期間で共在し始めた時代において、ひとびとが人の関係を捨てない新しい思想を求めようとしていたのではないか」という直感がなんとなく潜在しているような印象は受けた。そのような観点から見直すと、江戸の儒学者は、シカゴ派社会学の誕生がシカゴのスプロール化に抗するものであったことに似たような発生過程を経ていたと言い直せるのかもしれない。儒学の都市化とでもいうか。 -
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江戸時代の思想の博覧会。朱子学から国学、蘭学さらに天理教などまで及ぶ。どこかで聞いたことくらいはある思想、人名が多いのだが、改めてこうして総ざらえにされると、江戸の世に百花繚乱の思想があった様がよく分かる。あとがきに、思想に寄り添いすぎて批判的に読むのが苦手、と記してあるがたしかにその通りみたいで、正反対な志向を持つ思想を取り上げてもそれぞれの長所を誉めてしまう。厚くはない新書にこれだけ幅広く詰め込んでいるので細部の突っ込みはあまりないのだが、初心者には好適の見取り図。てんこ盛りすぎて消化不良のきらいはありますが。
元禄ルネサンスなんて言葉をどこかで聞いた記憶があるが、この様子にはルネサンス -
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江戸時代の思想史を概説している入門書です。
本書の冒頭では、応仁の乱以後の日本を連続的なものとして捉える内藤湖南や網野善彦の議論が参照されています。中世の日本人が異界に近しい生活を送っていたのに対し、近世に入ると社会が安定し世俗的な秩序が整えられるようになります。江戸時代の思想は、そうした社会的条件のもとで形成されていきました。本書では、朱子学の諸概念がこの時代の思想を明確にすることに役立ったことを指摘しつつも、近世以降の日本人が直接的に触れることになった問題を、江戸時代の諸種の思想のうちに読みとっています。
同じ「中公新書」には、伝統的な思想のなかに土着の近代性を見るという立場をとる源了