小泉綾子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一気読み!
叫びだしそうな、泣き出しそうな、何かが決壊しそうな。
これなんだろう?
覚えがあるような。
ああ、そうだ。
小説の中に自分のコアな部分を見つけたときの気持ちだ。
主人公の界は幼少時に右手の小指と薬指を欠損している。
とある事件で学校に行かなくなり、不良連中とファミレスで馬鹿話を繰り返す日々。
そんなある日、出会った年上の男・橘さんに傾倒していくーーー。
田舎の小さな世界で、自己否定感と自己肥大感をこじらせるさまが、リアリティを持って迫ってくる。
界は何度か「こいつのせいで」と欠損した指に対する憎しみを思う。
でも、それは、ある意味、自分に対する言い訳で、それに無意識に気づいてい -
Posted by ブクログ
地方と都市という普遍性のある対比と、何者にもなれないという葛藤が合わさる作品はよく見かけるけれど、本作では主人公の界(かい)が関わる人たちとの会話や行動が生々しく、地方の若者達のリアルな様子が読者に覆い被さる。
界は自分は今、現実世界とちゃんと関わっているのだと感じているが、実際は何も関わることができておらず、それに対しての絶望と、絶望さえも感じていない様が読んでいてヒリつく。
確かにラスト付近の唐突な展開はビックリするが、その出来事さえも現実とコネクトしていないんだと読んでいて気付くと、どこか達観した気持ちになる。
うまい。文章が上手すぎる。
町田康さんとの対談が『文藝2023冬号』に載って -
Posted by ブクログ
評判がよかったしタイトルに惹かれて期待していたけど想像とは少し違った。
思ったより地味。色々と中途半端。主人公の人格が前半と後半でだいぶ違うように思えるけどそのきっかけのようなものが見つけられなかった。前半は結構普通の人だったと思うのだけどなぜ後半で恐れ知らずで自棄っぱちになったのか?タチバナさん関係だけならまだしも田中杏奈へ態度も急に強気になってパワーバランス逆転。指の欠損もそう効果的でなくて中盤以降はその設定忘れてた。
あと主人公以外の登場人物はタチバナさんも、宗教じみたキャンプの集まりに向かう女性二人組も描写不足に思える。地元のヤンキーがタチバナさんに騙されるなと言う理由、これまでどんな -
Posted by ブクログ
中学生という一番繊細な時に、自分は何者でもなれるという自負心が特に強く芽生えることが多い。世間では中2病とよく呼ばれるのだが、
本作でも、中学生の少年・界が、地方の田舎に
住みながら自分の存在について、日々深く考えている。そこで、出会う田舎ヤンキーの橘さんに
惹かれながら、ほぼ舎弟のように行動を共にして、自分の存在を高めていく。でもある日その
橘さんの東京での一件で、界の意識が変わっていく。全部が全部田舎特有の意識とは言えないが、確かにどこかに、東京への憧れは一段に強いと感じているし、早く抜け出したい、この生活からという思いもあると思う。自分自身も中学時代と重ねたら、界みたいなマインドがあった