日本の元素戦略とは何か。何故、必要か。どんな体制、プロジェクトや組織を、どんな研究者がテーマにしているのか。科学的な話だけではなく、政治的な中身に触れ、戦略全体がよくわかる良書。元素の基本もおさらいできる。
想定しておく元素危機とは。例えば、自動車産業のハイブリット車電気自動車では必ずネオジム磁石
...続きを読むが使われている。このネオジム磁石には希少元素のジスプロシウムが欠かせない。液晶テレビ、有機ELテレビ、太陽電池にはITOと呼ばれる透明電極が使われているが、ここにもインジウムと言う希少元素。鉄鋼業でも、ニオブ。ガラスの研磨材であるセリウム。これはキャノンやニコンなどの高級レンズの件まやハードディスクのガラス基盤の研磨にも使われている。希少元素は、産業の必需品である。
しかし、この希少元素は、中国や南アフリカなどの海外に多く、依存している。1992年、鄧小平が「中東に石油があるように、中国にはレアアースがある」と述べたように、少なくとも中国では既に経済政策にも戦略的に取り入れられている。
そこで、元素戦略。その研究テーマの一つである元素間融合とは、現代版錬金術そのもの。元素Aと元素Cを混ぜるとその真ん中に位置する元素Bの性質を持つ元素を作ることができる。
そもそも、レアアースは、ランタノイド系とスカンジウム、イットリウムを合わせた17元素。レアメタルは、これに更にボロンやチタンなどを含む47元素。レアメタルとは産業への流通量が少ない金属系元素の事で、日本の経済産業省の造語。海外ではマイナーメタルと呼ぶのだが、恥ずかしながら、レアメタルの由来を知らなかった。
学び多し。願わくば、本著で紹介された研究テーマが更に発展し、日本が成果を享受できるように。