ヴィアンのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
SF、コメディ、恋愛、悲劇、全ての要素が合わさった新感覚の小説でした。SF要素が強くぶっ飛んだ世界観です。前半は恋愛コメディで、中盤から後半にかけては雰囲気が大きく変わって悲劇的で重たい雰囲気に。その作品内での大きな振れ幅も魅力的で、特に終盤はどうなっていくんだろうという展開で引き込まれていきました。始めのうちはあまりにも突拍子もない非現実的な出来事の連続で戸惑ったものの、慣れてくると他の小説では味わえない何とも言えない心地良さに変わっていきます。
言葉遊びも非常にユーモアです。例えばカクテルピアノという言葉はバーなどで会話の邪魔にならないピアノ音楽のことですが、この作品では音によって混ざるお -
Posted by ブクログ
かつて曾根元吉訳(『日々の泡』)で読んだ。今回、野崎歓訳で再読。
原著は1947年刊。現代の文脈ではなく、どうしても当時のアクチュアルな文脈で読んでみたかった。大戦終結後、実存主義が抬頭し、アメリカナイズされるパリ、青年たちの熱気の充満するパリ、この作品はそうした状況のなかで生まれたのだから。野崎歓訳は、当時はだれでもわかったような固有名詞に訳注を添えてくれていて、助けになる。
シュールさ&ことば遊び、なんとなくレイモン・クノーに近い。ジャン゠ソール・パルトルを登場させるところも洒落がきいている。ハツカネズミもいい役回りをしている。肺の中の睡蓮の蕾も、肺結核のメタファーとして絶妙。
原題はL& -
Posted by ブクログ
ネタバレずっと夢日記を読んでいる感覚だった。
「コランは道を走っていた。 「きっとすばらしい結婚式になるぞ……。明日、明日の朝だ。友だちはみんなきてくれる……」 クロエに通じる道だった。 「クロエ、あなたの唇はやわらかい。あなたの顔は果物のようにつやつやだ。あなたの目はしっかりとものを見ている。そしてあなたの体はぼくを熱くしてくれる……」 ビー玉が道を転がり、子どもたちがそのあとを追いかけてきた。 「あなたに十分キスしたという気持ちになるまでには、何カ月も、何カ月もかかるだろう。あなたに、あなたの手に、あなたの髪に、あなたの目に、あなたの首にキスしたいというぼくの想いが尽きるまでには、何カ月も、 -
Posted by ブクログ
詩的な表現を多く含んだ小説なのか、と思ったがこれは違う。
うたかたの日々は、一文一文を真に受け、作中世界の在り方に没入していかなければならないタイプの小説で、伏線や隠喩を解き明かすといった読書をする人にはこの作品の良さが分からないだろう。
我々が生きている世界では、肺に睡蓮は生えない。ハツカネズミは踊らない。わりとちゃんと働く。
だからこの小説はレアリスムではない。が、その反面、圧倒的にレアリスムだ。
世界が綿密に描かれ、作品固有の運動していく。
それを真に受けて読んだ我々がこの本を閉じる時、今読んだものがファンタジックな世界だとは微塵も感じることはないだろう。
そこには圧倒的なリアリティが -
Posted by ブクログ
面白かった・・・。
以前に別訳で「日々の泡」のタイトルの文庫本を買ったことがありました。もう10年以上前だったか。そのときは申し訳ありませんが、何が何だか訳のせいかのめりこめず、早々に脱落。
今回は、ほぼ盲目的に信じている光文社の新訳であることと、野崎歓氏の訳ということで再購入。読破。
いやあ、これはすごい小説ですね。
以下、ネタバレ。ただこの本は、ネタバレがどうこうという本じゃないですけど。
よほどの好みを持った人以外は、むしろ情報を色々仕入れてから読んだ方が良いと思います。
主人公はまあ、コランという青年ですね。この人はお金持ちで働く必要がない。ニコラという料理人を雇っています -
Posted by ブクログ
キッチュ!これに尽きる。読みやすくてサクサク読みすすめられる。
ガジェット満載の楽しいB級文学といったところ。
そんなジャンル存在するのかどうか分からないけど、大好きだ。
例えば映画『唇からナイフ』を観たときの感覚。ワクワクする。
いや待て、そういやこれの映画版観にいったわ。いまはなきシネセゾン渋谷かどっかでやってたような……?
映画もとことんキッチュだった、それだけ憶えている(笑)。
1968年製作だから30年近く経っての日本公開。そしてさらに20年が経過しようとしている今、新訳で原作を楽しむ——なかなか感慨深い。
この物語を完全視覚化するのは難しい。チャレンジングだったろうなー。
アニ -
Posted by ブクログ
おとななので、長い夏休みもないけど、夏に何かしっかりした物語を読みたいと思って選んだ1冊。けっこう読み終わるまで時間がかかった。なんとか夏が終わる前に読み終われてよかった。
はじめ現実離れした表現が目立ち、ヴィアンの本がはじめましてだから、そういうものかとなんとか受け入れることができた。そして、読み進めるほど、ファンタジー感は薄れて、気づけばけっこう暗い結末に向かっていくという。。
でも不思議なことに、読後に重さや悲しみのような負の感情はそこまで残らないさっぱり感?。ある意味、物語として最後まで楽しめたので、傑作なんだと思う。
本編終了後に丁寧に、解説と作者の年表と訳者のあとがき付きでありが -
Posted by ブクログ
幻想的な表現も助長し、
前半は兎にも角にも甘ったるい場面や描写が多く、カロリー高めであったが、
後半の落ち方に容赦がなく、ひたすら悲しい気持ちに。
とはいえ、思い返せば前半から容赦なく人が死んでゆく世界だった。
その世界に入り込むことへの準備さえできれば、
マジックリアリズムの面白さは跳ね上がる。
ハツカネズミの自殺で締めるのが印象的。
ーーーー
大切なことは二つだけ。きれいな女の子相手の恋愛。そしてデュ-ク・エリントンの音楽。他のものは消えていい。なぜなら醜いから。
ーーーー
あらかじめ失われた恋人たち
コランの日々には魔法がかけられます。
それは同時に、甘い罠でもあります。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ表題どおり、この小説はなによりも美しく、なによりも儚いもの、つまり「きれいな女の子との恋愛」と「デューク・エリントンの音楽」に捧げられている。
ひさしぶりに読み直して感じたのは、精緻に描かれたコントラストの妙。物語は、街から色彩の消える冬に始まり生命が躍動する新緑の季節に終わるのだが、登場人物たちの世界はそれとは反対に、徐々に色を、そして音楽を失ってゆく。彼らはいってみれば、彼らの住む世界との「同期」に失敗したのだ。その残酷さと不条理さ……。
破天荒なファンタジーのような顔をもつこの小説をはたして「読める」かどうかは、ボリス・ヴィアンの「感性」にどこまで肉薄できるかにかかっているような気も -
Posted by ブクログ
奇天烈。奇想天外。
そして やり切れない感情
イメージしながら読むも
イメージが追いつかない 笑
ハチャメチャな中にも 秩序らしきものはあって
生き物の生死に重きを置いていない世界にあって
愛は確かにあって。。。
何とも不思議な読みものだった
少々 読書欲が減退しつつも
後半は 彼らの行く末を苦しく思いつつ
一気に読み切った
ラストの猫とハツカネズミのやり取りは
胸につまる思い
リアルな あるべき現状を とっぱらって
素直に読むべき本
私は この世界の住人にはなりたくない
あまりにも…あんまりだ…
思っていたイメージと違った語りだったけど
何度か読むと 染みるのかもしれない
そういう気