ヴィアンのレビュー一覧

  • うたかたの日々
    ずっと夢日記を読んでいる感覚だった。

    「コランは道を走っていた。 「きっとすばらしい結婚式になるぞ……。明日、明日の朝だ。友だちはみんなきてくれる……」  クロエに通じる道だった。 「クロエ、あなたの唇はやわらかい。あなたの顔は果物のようにつやつやだ。あなたの目はしっかりとものを見ている。そしてあ...続きを読む
  • うたかたの日々
    詩的な表現を多く含んだ小説なのか、と思ったがこれは違う。
    うたかたの日々は、一文一文を真に受け、作中世界の在り方に没入していかなければならないタイプの小説で、伏線や隠喩を解き明かすといった読書をする人にはこの作品の良さが分からないだろう。

    我々が生きている世界では、肺に睡蓮は生えない。ハツカネズミ...続きを読む
  • うたかたの日々
    面白かった・・・。

    以前に別訳で「日々の泡」のタイトルの文庫本を買ったことがありました。もう10年以上前だったか。そのときは申し訳ありませんが、何が何だか訳のせいかのめりこめず、早々に脱落。
    今回は、ほぼ盲目的に信じている光文社の新訳であることと、野崎歓氏の訳ということで再購入。読破。
    いやあ、...続きを読む
  • うたかたの日々
    キッチュ!これに尽きる。読みやすくてサクサク読みすすめられる。
    ガジェット満載の楽しいB級文学といったところ。
    そんなジャンル存在するのかどうか分からないけど、大好きだ。

    例えば映画『唇からナイフ』を観たときの感覚。ワクワクする。
    いや待て、そういやこれの映画版観にいったわ。いまはなきシネセゾン渋...続きを読む
  • うたかたの日々
    僕たちの生きる世界とはちょっと違い、まるで夢の中での出来事のような非現実的な世界設定に最初はちょっと戸惑うが、物語全体に漂う、青春とその喪失感を描くのにはこれしかないという世界が素晴らしくも悲しい。物語は(お金とか仕事とか)どんどん現実の重みに潰されていくのだが、それでも非現実感は最後の最後まで強調...続きを読む
  • うたかたの日々
    「さあ行こう、猫ちゃん」
    「これ、猫の毛皮じゃないわよ、オオヤマネコよ」
    「オオヤマネコちゃんっていいにくいな」

    ひたすらにハッピーで太陽の真下にいるような前半から物語が終わりに近づくにつれて状況がどんどん悪くなっていくのは読んでいて辛かった。儚い。ところどころに散りばめられているファンタジー...続きを読む
  • うたかたの日々
    幻想的な表現も助長し、
    前半は兎にも角にも甘ったるい場面や描写が多く、カロリー高めであったが、
    後半の落ち方に容赦がなく、ひたすら悲しい気持ちに。

    とはいえ、思い返せば前半から容赦なく人が死んでゆく世界だった。
    その世界に入り込むことへの準備さえできれば、
    マジックリアリズムの面白さは跳ね上がる。...続きを読む
  • うたかたの日々
    美しく楽しい日々が結婚式を境にどんどん転落していく。誰にもどうにもできない虚しさ。ラストのキリストとの対話、ハツカネズミがとてもとても悲しい。全てを読み終えて、まえがきに「大切なことは二つだけ。どんな流儀であれ、きれいな女の子相手の恋愛。そしてニューオーリンズの音楽、つまりデューク・エリントンの音楽...続きを読む
  • うたかたの日々
    映画を見てやるせなくなったので、救いを求めて原作を読みました。結末が変わるわけではないので救われたかどうかは微妙ですが、読んだ後と前では印象がだいぶ変わりました。原作も映画もファンタジックな世界観は同じですが、映画の方が実写として現実味が強調される分、悲惨さが増しています。
    その点文字だとシュールさ...続きを読む
  • うたかたの日々
    ヴィアンはルイス・キャロルを読んでいたのだろうか。
    ふつうのラブストーリーを想像すると出鼻をくじかれる。
    原語も流行ったころのフランスの世相もわからないから理解できない。という考え方もあるけど。夢のように突拍子なく展開する物語を楽しんでしまえばいいとも思う。子どもの時に不思議の国のアリスを読んでいる...続きを読む
  • うたかたの日々
    幻想的でありながらも淡々の物語が進んでいく。
    お伽話のような感覚でありながら、音楽描写も表現豊かに描かれており、
    すごく切ない大人の童話。

    肺の中に睡蓮が育つ病気に侵されてしまうヒロイン。
    それを献身的に見守る主人公。

    にしても、悲しい物語であり、純愛。

    そして、最初のまえがきから、印象的。
    ...続きを読む
  • うたかたの日々
    日々の泡を高校生のときに読んで、いつかまた読み直したいと思っていた時にたまたま新訳を見つけて衝動買い。私の理解力が上がったこともあるかもしれないけど、日々の泡よりも読みやすかったし楽しかった。そしてやっぱりすごかった。ボリス・ヴィアンの才能を感じた。こんなに切なくて辛い話だったかと、読み直してみて驚...続きを読む
  • うたかたの日々
    表題どおり、この小説はなによりも美しく、なによりも儚いもの、つまり「きれいな女の子との恋愛」と「デューク・エリントンの音楽」に捧げられている。

    ひさしぶりに読み直して感じたのは、精緻に描かれたコントラストの妙。物語は、街から色彩の消える冬に始まり生命が躍動する新緑の季節に終わるのだが、登場人物たち...続きを読む
  • うたかたの日々
    最初はただただ不可思議な物語世界に混乱するばかりだったが、よく夢に見るような世界なんだと思うようにしたらだいぶ読みやすくなった。
    夢の中ならちょっとくらいおかしなことも起こるから。

    クロエが病気になって以降、ただの幸せな夢の中から、悪夢の中に入っていくようだった。私は悪夢パートの方が読みやすく感じ...続きを読む
  • うたかたの日々
    視覚的・感覚的な面白さを追求しているように感じた。
    最初は読みにくく感じたが、クロエが倒れたあたりから一気に読みやすくなった。
    情景と感情が同化した世界なのだ。
    作中には皮肉な視線もちりばめられていた。
    ハツカネズミがの存在がずっと温かかった。
    小さくて穏やかで優しく美しい存在だった。
  • うたかたの日々
    なんとも珍妙な逸品。物語の筋は若者たちの恋愛と友情、そして悲劇の物語だが、表現がほぼナンセンスな表現で読み手の許容力を試される。
    うまく物語に入り込めることができれば恋愛、仕事、お金、趣味と価値観(シックの収集)などに共感出来る。
    クロエが亡くなり葬式を頼む場面以降がぶっ飛んでいる。悲しい場面のはず...続きを読む
  • うたかたの日々
    精神状態に呼応して周囲の世界までもが変わっていく面白い世界。1,2行で主人公が突然人を殺したりするし、その後はそのことには触れられもしない。
    「普通」の感覚で読んでいくと混乱するが、「そういうものだ」と思って受け入れていくとこの不思議な世界を楽しむことができる。
  • うたかたの日々
    ヴィアン 「 うたかたの日々 」 苦手なシュルレアリスム小説であるが、前書きのおかげで、テーマは 拾えた

    前書き「人生で大切なのは、恋愛とデュークエリントンの音楽 だけ〜他は醜いから消えていい」が この小説の命題。


    たしかに 幸福な恋愛場面は 「A列車で行こう」的な 軽妙さがある


    タイト...続きを読む
  • うたかたの日々
    『きれいな女の子との恋愛、それとニューオーリンズかデューク・エリントンの音楽。その他のものはみんな消えちまえばいい。なぜって、その他のものはみんな醜いからだ。』そんな著者のパンクな言葉から始まる本作。
    青年コランは音楽と料理を楽しむ裕福な暮らしを愛し、労働とは無縁の生活をしていた。コランは恋人クロエ...続きを読む
  • うたかたの日々
    ミシェル・ゴンドリー「ムード・インディゴ」を受けて
    本書に関しては言葉遊び・造語など原書で読んだらおもしろいのだろうなというところと視覚的な表現が多いといった意味ではムード・インディゴが原作に忠実であることがわかった
    ゴンドリー作品なのでだいぶ変更があると思っていたからその点意外 原作の素晴らしさあ...続きを読む