クリストファー・プリーストのレビュー一覧
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ここ(ドリーム・アーキペラゴ)ではどんなことも起こり得る―
時間勾配の歪みにより地図の作成が不可能とされている架空の世界。そこに点在する無数の島からなる通称夢幻諸島(ドリーム・アーキペラゴ)が舞台の物語。英国作家の”信頼できない語り手”ことプリーストが書き記した、死と狂気に彩られた島々に纏わる35の記録譚。
『グールン』~大提督劇場~
商業演劇の演出家を目指し、とある劇場に勤め始めた青年。出演者の一人、謎の王”ロード”を名乗る奇術師との出逢いを発端に様々な出来事が巻き起こる。やがて、執拗に主人公を付け回す不審な小男や奈落での亡霊騒ぎがひとつに繋がっていく。
『チェーナー』~雨の影~
人民裁判所に残されたある殺人事件容疑者の取調べ調書。正常なように見えながら節々に僅かに滲み渡る奇妙な印象を抱かせる自供文。繰り返される肯定と否定。果たして彼は本当に真犯人なのか。
『ミークァ/トレム』~足の速い放浪者~
夢幻諸島の地図を作るため島々の情報を集め飛びまわる無人飛行機ドローン。地図製作チームの一人ローナは、軍の占拠下にある立入制限区域に姿を消した恋人の行方を探ろうとドローンを利用することを思いつくが。異色の恋愛もの。
この他にもたくさんの物語が研究書・覚書き・独白・ガイドブックなど様々な形をとって表されています。それぞれの話がバラバラなようで実は繋がっているなどというところはまさしく群島のよう。詳細を穿って描かれた世界観はまるで本当に実在するかのような心地にしてくれます。夢幻諸島に秘められた物語たちはどこまでも尽きることを知りません。
そんなお話。 -
Posted by ブクログ
なかなか訳者あとがき定番の内容紹介に入ろうとしないのは、
作者の意向を汲んで、
読者になるべく目かくしした状態で本書を発見してもらうために、
訳者もくわしい内容紹介をされないそうだ。
あとがき定番の内容紹介がくわしいあらすじ紹介ならば、
言わずもがなのことだと思う。
同じく訳者の方は、イアン・マクドナルドの「火星夜想曲」
みたいな感じとおっしゃっているが、
私にはコードウェイナー・スミスの「人類補完機構シリーズ」風味も少し感じられた。
2012 年 英国 SF 協会賞長編部門受賞作品。
2012 年 ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作品。 -
Posted by ブクログ
現実と夢の境界が曖昧に溶けていく独特の読書体験を与える作品だった。
主人公ピーターが現実世界と夢諸島を行き来する構造は非常に魅力的で、どちらが“本当”なのか分からなくなる感覚は、どこか村上春樹作品にも通じるものを感じた。
一方で、ピーターの人物像には強い苛立ちも覚えた。特に終盤、女性に原稿を読んでほしいと執拗に頼む場面は痛々しく、自分の存在を他人に承認してもらおうとする必死さが露骨に表れていて印象的だった。彼の行動は共感しづらいが、その不器用さや逃避の姿勢にはどこか現実的な怖さもある。理解しきれない部分を残しつつも、読後にじわじわと思考を刺激し続ける、不思議な余韻を持った一冊だった。 -
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架空の星にあるドリーム・アーキペラゴ諸島の観光ガイド、物語で紹介する連作短編集
実は購入してから3回目の挑戦で、ついに読み終えた。毎度眠くなるのだ
実に半年程、3回目の挑戦でやっと読み方、付き合い方がわかった
時間勾配の歪みのため正確な地図が作れない
この設定部分を勘違いして読んでいた為何が何だかわからず毎度眠くなってしまっていた
島々の逸話集とてっきり思っていた為、例えば何度も出てくるパントマイマー殺人事件
別の島の話になってもその事件が語られ始め時間と土地の認識が自分の中で整理することが出来ず理解しようとゆっくり読んでいたらいつの間にか寝ていた
はっきりとSF設定のある架空のガイド本ではなく幻想ミステリー(?)と思い向き合ったらようやく夢幻諸島という枠組みが腑に落ち、島々で語られるエピソードの断片が結びつきパッチワークのような構造の物語だったのかとわかった
実際にある島の設定なんじゃと思ってしまうほど設定が細かく、プリーストの想像力、何よりこんな入り組んだ構造を構築出来る頭に眠くなってしまっていた自分が情けない
心に刺さるか刺さらないかだけですごい本
プリーストは小説が上手い
悪い意味で上手過ぎる、とも感じるが
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Posted by ブクログ
最終的な感想は下巻に。
(以下上巻しか読んでない状態での感想)同じ環境で育った二人の、第二次世界大戦の正反対生き方の話。イギリスから見たドイツの状況。ベルリンオリンピックで感じた人種差別と戦争へ突き進む空気。互いに空襲をし、軍事拠点から一般の都市を破壊することに思考を止め、撃墜の恐怖と戦う。戦後の記録と、回顧録が交互に出てくる。
双子であるという設定があまり生きてない気がするけど。かたっぽのJLソウヤーの話だけだし、過去と現在交互に語られるので、全然話の方向性が見えない、どういうジャンルの話なのかつかめない。歴史小説?
戦時の厳しさとか、家族であっても遠い存在とか、、、? -
Posted by ブクログ
さあて、下巻でどのようにSF要素を……
いや、どっちかというとミステリじゃないかなあ。
1941年のことに詳しくないし、
ヘスについてもほぼ知らないと言ってもいいくらいだし、
そのあたりの基礎知識があれば、より興味深く読めただろうね。勉強不足だね、僕の。
解説読んで、一晩考えて、やっといろいろ得心がいきましたよ。
そしてちゃんと原題も見ておくべきだった……
今は、
もし戦争が終わっていても米中戦争が起こっていたくらいだから日本が戦争に巻き込まれるなりするのは確実だし、太平洋戦争はなかったかもしれないけれど南方の国々は植民地支配から開放されたんだろうか、
とかそっちのifが頭のなかをぐるぐるしています。 -
Posted by ブクログ
南北の大陸に挟まれたアーキペラゴ地帯。磁気による歪みのために正確な地図はつくれず、いったいいくつの島があるかも不明だ。島々は平和不可侵条約を締結しているものの、北の大陸で戦争をくりひろげる南大陸国家の戦略的利害のために、多くの島々には軍事基地がおかれ、脱走兵がやってきては連れ戻され、条約は有名無実化している。
まずはこの世界像にぞくぞくとする。こんな島嶼国がどこかに実在しているのをたしかに知っているという気がする。
このアーキペラゴには幾人かの伝説的な人物たちがいる。無類の美男で女好きの画家バーサースト、社会改革の提唱者カウラー、トンネル堀りアーティストのジョーデン・ヨー、自ら伝説化した故郷の島から一生出なかった作家チェスター・カムストン、謎の死を遂げたパフォーマンスアーティストのコミス。
島々のトラベルガイドという体裁をとった物語を通して、これらの人物たちの姿は意外な線でつながり、より明確な像を結ぼうとするが、まるで正確な地図作成を困難にする磁気の歪みのように、さまざまな人々が語る彼らの像はところどころに矛盾や歪みをはらんでいる。
ひとつひとつはささやかな<短編未満>のような作品集だが、心の中に鮮やかなイメージが残るような印象的シーンがある。たとえば、目の前に見えているのに存在しない島に近づこうとする「ミークァ/トレム」の主人公が見つめる、永遠に囚われて飛び続ける無人機。不気味な塔の放つ恐怖におびえながら塔に自ら囚われる「シーヴル」の青年。「リーヴァー」で観測されるという、頭上に停止したまま横滑りしていく飛行機の姿。
「幻想小説」にしてはなんだかリアルな、奇妙に歪んだ魅力のある短篇集だ。