植木不等式のレビュー一覧
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ぼくらの哀しき超兵器 軍事と科学の夢のあと
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Posted by ブクログ
なぜ軍事研究・兵器開発では突拍子もない発想が許され、予算やヒトまでが付けられてしまうかを考えたくて読んだ。本書では、近代兵器に呪術的に立ち向かったタンザニアや中国の人々の物語、インテリジェンス・コミュニティの思考回路が生んだ奇妙なオペレーションにかんするエピソードも含めている。
著者の該博な知識には驚かされるばかりだったが、この種の記事にありがちな「トンデモ」な「珍妙さ」を愛でるというスタンスがどうしても気になった。「トンデモ」として差別化して表象してしまうと、軍事研究・兵器開発の知が構造的に持っているいびつさを取り落とすことになるのではないか。言いかえれば、軍事研究・兵器開発には、不可避的に社会の他のセクターであれば「トンデモ」「非常識」としか見えない知を生み出す可能性がある、と考えた方がよいのではないか。「ムーンショット型研究開発」など、現在の日本国家の科学技術政策が、国家としてそうした方向を目指そうとしていることには、愚かさしか感じない。 -
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Posted by ブクログ
人類の英知を結集した科学技術。歴史の中で、ときにそれは、権力者と結びつき、黒い面を覗かせた。科学研究には得てして、カネが掛かる。「国家」に設備資金を投入してもらい、「国家」の利益となる研究を進める。平時であればそれは人類全体の利益につながる研究なのだろうが、ひとたび「国家」が戦争当事国となった場合、どうなるか。往々にして、軍事研究にカネがつぎ込まれることになる。
これとは別に、科学には、地道に研究を進める側面と、ときにより、それまで誰もが思いつかなかった発想の転換で大きな進歩が成し遂げられる側面がある。固定観念に囚われない、天才的な飛躍が大きな発展を生むことがあるのだ。ガリレオしかり、ニュートンしかり、アインシュタインしかり。「常識」に囚われない柔軟な思考が、新しい地平を拓く。地に足を付けた思考は大事だが、石橋を叩いてばかりいては大河を超えることはできない。
さてここに、短絡的で誇大妄想気味な権力者がいたとする。敵国を壊滅させるあっと驚くような兵器を作れるはずだと科学者に発破を掛ける。ほれ、ここをこうしてこうすれば、こんな兵器が作れるだろう? 何、無理? チャレンジ精神を見せろ。やれば出来るはずだ! どうにかならんのか!?
あるいは口のうまい科学者がいたとする。閣下、これが成功すれば我が方の勝利は間違いなしです!! 「裸の王様」の仕立屋さながら、布を織っているふりをしては、あれが必要、これを買わねばと、カネを要求する。・・・いや、王様を騙しているつもりが、いつか、彼自身の目にも、世にも稀なる布が見えてきているのかもしれない・・・。
本書は「型破り(unconventional)」な兵器の未完成カタログである。軍備には古来、多くの資金が費やされ、人材が投じられてきた。もちろん、本当に殺傷能力の高いものも次々生み出されてきたわけだが、科学と政治の微妙なせめぎ合いの中で、トンデモ兵器も考案されては泡沫として歴史の海の中に消えていった。
よく知られるものとしては、日本陸軍の考案した「風船爆弾」が挙げられる。気球に爆弾を付けてアメリカ大陸まで飛ばそうというものだが、それだけ聞けば何をバカなと思うが、実際に太平洋を渡り、爆発を起こしたものもあるという。そう、可能性としてはあるのだ、トンデモ発想が成果を上げてしまうことが。たいていは非常に低いものであったとしても。
本書ではそんな例が山ほど出てくる。
空母が欲しい。でも沈められるとカネが掛かる。じゃあ氷で造ったらどうか? これなら沈まないし、量産も可能だぞ。(英国「ハバクク」計画)
キューバのカストロってヤツは、何だか人気が高くて、我が国にもファンがいるそうだな。けしからん。何とかしないと、共産主義がはびこるじゃないか。脱毛剤でトレードマークのひげをなくしちゃったらいいんじゃないのか!?(米CIA考案、タリウムによるカストロ脱毛計画) *この「ひげ攻撃作戦」は実は、ヒトラーにも適用計画があったらしい。
地上戦にしても空爆にしても、戦闘はやっぱり大変だ。ぴかっと光れば敵が全滅するような、強力な光線て作れないものだろうか? ほら、遠隔操作なら、スイッチ1つで済むでしょう。電磁波ビームとか、できないのか?(各国の「殺人光線」作戦)。
大半は「いや、それあり得ないから!」というものなのだが、怖いことに、部分的に成功するものもあるのだ。毒ガスだって、原爆だって、最初は荒唐無稽と思われたんじゃないだろうか。大まじめにやっているうちに、トンデモ兵器がとんでもない兵器に化ける可能性はゼロじゃない。
苦笑しながら読み進めるうちに、何だかひたひたと怖さが忍び寄ってくる。
・・・ああ、バカな人間が戦争をしたくなくなるような究極の「平和兵器」は発明できないの!?
岩波の雑誌「科学」に連載されたもの。
ちょっとシニカルで、癖のある文章は、少々好き嫌いが分かれそう。さまざまな映像作品・文学作品のパロディがちりばめられているのだが、なかなか全部は拾いきれなかった。著者は筆名が匂わせるように、「奇才」なのだろう。
キューブリック監督の「博士の異常な愛情」が好きだった方にはお薦め。 -
ぼくらの哀しき超兵器 軍事と科学の夢のあと
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