英国ロイヤル・バレエ団で20年近くプリンシパルとして踊ってきたダンサーの、これまでと現在を綴ったエッセイ。
吉田さんのロイヤル・バレエ団引退公演を偶然見て、その美しさと高い表現力が印象に残っている。
それで、本書を読んでみることにした。
バレエにほとんどなじみがなかったので、いろいろなことが自分
...続きを読むには新鮮だった。
ロイヤル・バレエの特色が、リアルな演技にあること。
引退公演の「ロミオとジュリエット」での可憐なジュリエットはこういう考えの下に表現されたのか、と納得。
身体感覚の表現のしかたも興味深い。
リフトは、男性ダンサーが腕の力で持ち上げるものではないという話があった。
たしかに、ふわっと持ち上がるあの状態を見ると、息を合わせてやっている感じはわかる。
本書によると、女性ダンサーは、「体をまとめておく」のだそうだ。
自分の身体感覚で体験することは難しそうだが、何かわかるような気がしたのが不思議。
呼吸も、大きな技に入るときは、まず一度息を吐き切り、身体の外側の力を抜く。
それにより体軸がしっかり意識できるという。
自分も楽器を習っているので、呼吸や体軸のことには興味があり、こういうところも参考になった。
最後の阿川佐和子さんとの対談も面白い。
本当に阿川さんが聞き上手で、いろんな情報を引き出してくれるのがうれしいところ。
イギリス、フランス、ロシアのバレエの違いや、日本の群舞のレベルの高さなどのところが面白かった。