田島正樹のレビュー一覧

  • スピノザという暗号

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    近所の古書店にて購入。スピノザが用いた方法論をスピノザ自身に当て嵌めることで、スピノザ哲学に新たな光をもたらそうという試み。テーマが多岐に亘る故か些か散漫な感じは否めないが、それでも中~後半にかけて見るべき点が多い。第3章『自己原因としての神』で説明される二種類の因果性や重要概念コナトス(自己保存の努力)、第4章『心―身問題』におけるエチカ諸定理の丹念な追跡調査、そして第5章『倫理』ではスピノザの自然主義が解体され、その現代的意義が浮き彫りになる。

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    2013年05月26日
  • スピノザという暗号

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    現代の心の哲学や実在論/反実在論をめぐる議論を参照軸にしながら、スピノザ哲学の現代的意義を探る試み。スピノザ解釈としての妥当性はともかくとして、著者の議論そのものはたいへんおもしろく読んだ。

    著者は、スピノザ哲学の「内在主義」に秘められた現代的意義を高く評価する一方で、その実在論的な傾向を持った「全体論」ないし「実体一元論」を批判している。

    神の啓示の内容も全体論的な布置の中で理解されるというのが、スピノザの内在主義の立場だと著者はいう。そこから、私たちが従うべき倫理的価値は現実に営まれている社会と別に存在するものではなく、それらの営みへのコミットによって生じるものであり、倫理学はそのコミ

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    2012年05月26日
  • 古代ギリシアの精神

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    プラトンの提示した視点があまりにも当然になりすぎたプラトン以後の世界の見方に対して、そうではない視点から古代ギリシアの哲学を見直す、という提案。
    イオニアの系譜として、文献が比較的残っているアリストテレスを読み直すことで何が得られるかということだが、脱プラトンでラカンやカントが引き合いに出されている。
    そこが激ムズの原因でもある。難しすぎてかなりしんどかった。

    全体像が掴みにくいのだが、偶然と運の違いや、差異によって意味を何に固定するのか、その時隠蔽される別の可能性による悲劇性など、面白い箇所は随所にある。
    ラカンやカントの部分がわかれば、もっと理解が進むだろうし面白さの裏付けにもなると思う

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    2022年05月07日
  • 古代ギリシアの精神

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    古代ギリシアの思想、とりわけアリストテレスの『霊魂論』を中心にとりあげ、その検討を通じて著者自身の哲学的考察が展開されている本です。

    著者は、ギリシア悲劇において表現されている世界観を明らかにしています。アリストテレスが『詩学』のなかで、「悲劇が人の心を動かすに当たって最も大きな役割を果たす二つの要因、すなわち逆転と認知とは、いずれも筋の要素に他ならない」と述べていることを引いて、悲劇的な運命の「認知」の契機が作品のなかでどのような役割を果たしているのかということを、具体的に示しています。

    しかし、悲劇の本質を明らかにすることが本書のねらいなのではありません。著者は、悲劇的な帰結が登場人物

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    2021年12月04日