青木昌彦のレビュー一覧
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青木昌彦が先月(7月15日)亡くなったと知った。青木もそうだが、廣松渉、西部邁、柄谷行人など1950年代に「ブント(共産主義者同盟)」に関わった人々には結構有名人が多い。廣松、柄谷は終生(柄谷は存命だが) 「左翼」を貫いたが、西部、青木は早々と「転向」した。西部は今や保守論壇の重鎮となり、青木はアカデミズムのメインストリームで国際的にも高い評価を得た。昔の左翼は随分頭が良かったものだとつくづく思う。
本書で青木が論じてることは現象としては実はありふれた常識的なことだ。 前近代的な共同体の残滓に見えた日本企業の組織原理が、決して「遅れた」ものでも非合理的なものでもなく、情報処理システムとして極 -
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青木昌彦氏は、京都大学とスタンフォード大学で教授職にあった高名な経済研究者で、もしかしたら日本人で初のノーベル経済学賞を受賞するのではないかと言われていた方であるが、残念ながら2015年に亡くなられた。
本書の題名にもなっている「比較制度分析」は、青木氏が始めた経済理論・経済分析の方法論である。本書自体は2008年の発行であるが、本書の元本は、1995年に発表された「経済システムの進化と多元性-比較制度分析序説」というもので、青木氏が、比較制度分析の論文を書き始めて、すなわち、理論・方法論の初期の頃に書かれたものである。
大学院で修士論文を執筆中なのであるが、論文の中で用いる分析方法として、「 -
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新古典派的な経済観で行けば、競争的な市場こそが単一で最適な経済制度であって、それにどう近づけるかが課題で、だから、日本もグローバルスタンダードにあわせるべきだという意見。一方で、そうした姿勢に反対する立場も、そうした経済観をある程度認めたうえで日本の市場は特殊だからという意見だったり、そもそも経済的な視点の外からの反対だったりする。
どちらにせよ、経済制度という観点では最適な市場は一つしかないということは一致してる。
それに対して、この比較制度分析では、日本は特殊だとは見なさないし、だからといって新古典派的な経済制度が唯一の最適解だとも考えない。そもそも経済制度はもっと多元的で、さまざまな形 -
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現在、「経済学」といわれた時に指し示すものは、一般的にはワルラスが提唱した完全競争モデルである。このモデルに従うのならば、そこに経済の多様性は見出されない。すなわち、全てのプレイヤーが経済合理的であり、それぞれが各々の利益最大化を追求する行動を選択する。これを市場がコーディネーションすることで、利益が社会に還元され、経済は大きくなっていく。
しかしながら、このように普遍的な経済モデルをもって、すべての経済的事象を説明することは可能であろうか。この疑問に対して懐疑的な立場から、経済の多様性を重視する見方が「比較制度分析」と呼ばれるものである。筆者によれば、比較制度分析とは、「多様性」の経済利益