堤重久のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本は、いまから57年前に筑摩書房から刊行された本の再刊である。当時、書店か新刊案内のチラシなどで見かけた記憶が微かにあるが、買って読もうとまではしなかった。堤重久という名も何度も目にはしてした。
いまになって、筑摩文庫から装いも新たに出た本を手にして予想外の感激に浸っている。原稿用紙にして500枚の長編であるが、一気に読めた。太宰治の周りにいる人が書いた友人の目からではなく、この本と同じ弟子の目から見た小説に野原一夫の『回想太宰治』がある。生の太宰治との出逢い、会話、生き様が実にリアルに描画されていた作品だった。堤重久のこの小説は、真心がこもった美味しい料理を前にして、一つ一つゆっくりと吟味していくようなニュアンスがある。17章に編んだ各章に強烈なノスタルジーを覚えるのはなぜだろう。
若い頃、太宰治の本に棲む「毒」に冒されぱっなしだった私は一時、太宰から距離を置いた。読むのをやめた。しかし、30歳ぐらいからまた読み始めたのだった。だから、この作品の冒頭を読んだだけで、懐かしさの感涙に浸ったのである。著者の長編を一気に読ませる筆力は対したものである。繰り返すが、美味しい料理を一つ食べ終わって、次の ••• その満酌の感を覚える瞬間に誘われていく幸せな読書なのである。
太宰治には男女問わず、友人•知人•弟子が何十人もいた。自殺未遂を2回するほどの凄まじい生涯であったが、彼を取り巻く文学仲間との交流には「羨ましさ」を感じる。太宰治というのは、人を惹きつける何かを持っていた人物なのであろう。そのことを堤重久は言いたかったのかも知れない。