行動療法を中心にした精神療法的アプローチを丁寧に紹介した実践的な書。
著者の誠実な人柄が行間から伝わってくるのが読んでいて心地よい。
行動療法においては、患者の生活の実態が目に浮かぶようになるまで症状を徹底的に詳細に聞きこむということの大切さ、それ自体がもつ治療的な力というものをあらためて認識させられた。
先輩の松尾正からの「あんたはそっちがおうとる!」という鶴の一声で、ロンドン・モーズレイ病院で認知行動療法を学ぶことになったという経緯が、ご当人の素直さもさることながら、九大の懐の深さと人を育てる力を端的に伝えてくれる。