三菱UFJフィナンシャルグループの端末環境の変革プロジェクトに関する解説書。直接関わったわけではないが、プロジェクトの噂は聞いていたので、興味があって読んでみた。
構成は大きく検討編、成果物編、推進編の3つに分かれており、それぞれの感想は以下の通り。
●検討編
システム企画を作るために、Enterprise Archtecture(EA)のフレームワークを使って整理・検討していく。内容はきれいに整理されていて、すらっと読めて納得できるのだけど、ここに行き着くまでには相当苦労したんだろうなぁ、という印象。あと、このレベルの企画を通そうとすると、会社全体のビジネス戦略・IT戦略だけでなく、purpose/mission/visionという上位方針とも整合性をとった形で経営層の承認を取らないといけないので、なかなか大変である。つまりは、簡単に見えて、メチャクチャすごい話である。
●成果物編
前章の検討編で検討した結果をまとめた章。ゼロトラストについてある程度知識があると、それほど目新しい情報はない。でもこの章の価値は目新しさにあるわけではなく、企画書として実現する方向を定義していること。プロジェクト開始した後はプロジェクト憲章として使うことを意識して作られていて、超上流の成果物として非常に参考になる。
●推進編
一番著者の自我が出ている章。大企業で大きな変革を行うときに必要となる人間思考に焦点を当てているのが特徴。前章までは割と淡々と企画について論理的に説明していたけど、認知バイアスや組織の原理にも注目しないと、机上の空論で終わってしまうことを意識している。好みの章である。
●全体の感想
通常エンジニアとしては要件定義から入ることが多いけど、その前段の超上流工程について、具体的に書かれていて参考になる。読みものとしては淡白で面白みに欠けるが、詰め込まれた論理と知性と苦労を推察できる良本だった。