山口良文のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
のっけから、クマの越冬は冬眠か、とあって驚く。えーっ、そうじゃないの!?
寒冷な時期を生き延びるための生存戦略として、冬眠を見る。その戦略は、変温動物から恒温動物まで多種多様。ヒトの冬場の鬱だって、われわれの祖先の適応戦略だったのかもしれない。そう考えると、冬眠はいろんなグラデーションのあるスペクトラム。
年1回の生理事象だから、なかなか研究が難しい。概年リズム、気温や日照との関係、睡眠との違い、冬眠誘導物質……最新の研究も紹介しながら、著者は「冬眠は9割が謎」だと言っている。確かに、読んでゆくと、たくさんの疑問がぽこぽこ浮かんでくる(たとえば、なぜ数カ月も動かないでいるのに、筋肉は萎縮しないのか、とか)。
最終章の4章は、著者の研究ミニ自伝。発生生物学から冬眠の研究に進み、東大薬学部の教員から、公募で北大低温科学研究所へ。冬眠の研究の場として、ドンピシャのところではないか。この章は研究者の卵たちへの応援歌(あるいはリクルートソング)としても読める。
巻末には「参考文献・ウェブサイト」。これもよくできている。 -
Posted by ブクログ
冬眠 hibernation ハイバーネーション
動物が厳しい冬をやり過ごすために、代謝を低くして眠りにつくことを冬眠というが、実際のところはどういうものなのか? 休眠 トーパー torporとの違い、亀や蛇といった変温動物と、リスや熊などの恒温動物の冬眠の違い。言葉として知ってはいても、実際のところは曖昧なこの『冬眠』という行動を解説し、どのように今は研究されていて、どういう可能性を持っているのかを紹介している。
内容は平易でわかりやすいが、『冬眠』という童話などでも出てくるものが実は動物によって細かく違っている事実を、丁寧に扱っているために総評としては少々難しいかもしれない。しかし生物学と動物学を知っているならばエキサイティングで面白く、楽しく読めると思う。
科学はわかっていることを研究しているわけではなく、わかっていないことを研究している。それが前面に出ている。故に、要所要所で『ここまではわかっているが、それ以外はまだわかっていない』と書かれている。ある意味で誠実で好感が持てる反面、これを受け入れるだけの素地を社会が持っているだろうかと疑問に思うなどした。
4章からなる本書の、4章目は著者のこれまでの研究人生についてが語られている。そこからにじみ出るのは、科学というものが連綿と続いてきた先人たちから受け継がれてきたもので、自分の後にも、次にも続いてほしいという切実な想いだ。世論や世情を考えるに、最先端にいる人間ほど危機感があるのだろうと感じた。 -
Posted by ブクログ
新聞の書評で見かけて読みたかった本。冬眠に興味を持ち、研究を始めた大学教授による本。身近な動物が持つ習性ながらも研究の世界ではマイナーで研究に時間を要するため、未解明なことが多いと言う。
日本では「冬眠」という呼び方だが、英語圏ては「休眠」と訳される言い方をされている。実際、冬でなくても冬眠の定義に当たる行動をする動物がいるらしい。主には活動を抑制しなければならない時期に身体の代謝を下げ、その時期を乗り切るための命がけの仕組みであり、冬眠したまま失敗して死に至る場合もあるという。
冬眠の研究を通じて医学に応用できないかという話題が出てくる。SF的なコールドスリープではなく、身体の機能を低活性化させることによる治療方法だったりする。
時々遺伝子に関わる専門用語が出てきて難しい箇所はあるが、総じて分かりやすい。筆者の研究心、好奇心が前面に出ている。