有賀未来のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
アイデンティティが揺らぐことは誰しも少なからず経験したことがあるのではないか。私も大学進学時に東京に出て教育格差や文化資本の差を思い知らされたし、就職で九州に来てからは地方の学閥の強さに辟易し社会的紐帯の途切れた個人となっている。そんなとき、特にひとりでいざるを得ないとき自分とは一体何なんだ?と考えてしまう。
この本は日本で育った香港人の女の子が香港の反政府デモなどをきっかけに自分とは何かを問い続ける物語だ。作者は執筆時点で18歳でその若々しさは文体にも顕れている。投げやりで刺々した自分語りは裏返せば瑞々しさでもある。
アイデンティティは育った環境や文化で培われるものでどの国境の内側にいる -
Posted by ブクログ
飾っておきたくなるようなカッコいい表紙。香港が絡んでいる本や映画は、ひとまず目を通したくなる。文体が独特で、ラップ調に詩を読んでいるような無二の感じ。挑戦的で面白かった。返還後の香港に生きる人々の話かと勝手に想像していたがまったく違い、香港生まれ日本育ちの女の子が自己の寄る辺ないアイデンティティと向き合い悩む話。というだけでもなく、もっともっと彼女には複雑な生い立ちがある。読んでいて言語の重要性も痛感した。言語が自信にもなり、安心にもなる。「それは、それは、いいよね、阿姨は、何も考えずに、日本人を名乗れるから、香港のパスポートを失っても広東語も普通話も話せるから、香港人や中国人って名乗れる、け
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Posted by ブクログ
新潮新人賞受賞作、著者は受賞時18歳の高校3年生。読点を多用して、こんがらがった思考ととめどない感情を綴る合間に、淡白なLINEのやり取りが挟まれたり。詩に近いような、独特なリズム。その若さと痛々しさが切に伝わってくる、息切れするような文章だった。
登場人物の出自については誰も断片的にしか明かされないけれど、主人公の高校生・シンユは「日本人」「香港人」「中国人」どれとも言い切れない、複合的なアイデンティティを抱えて、日本語しか喋れなくて、朝鮮の血を引く唯一の友人に心惹かれて、香港で母親に(おそらく)捨てられて、それでも香港とのつながりを失いたくない。確固たる故郷をもたない青少年の不安定な胸の内 -
Posted by ブクログ
<あらすじ>
生まれは香港、育ちは日本。だから、広東語は話せなくて、日本語しか話せない。それでも、あたしの名前は生まれた地の空気を纏わせていて、名乗ったときの周りの空気もそれ用のものになる。あたしの居場所はどこなのか。正しいそれはどこなのか。あたしじゃないだれか、あたしがいるべき場所に連れて行って———
<感想>
自分が何者なのかわからない。自分が今どこで生きているのかもわからない。自分が存在していていいのかもわからない。彼女の暮らす毎日には酸素が薄く、読者である私も思わず息をのんでしまう凄みが文章から伝わってくる。そんな文章自体が持つ力もさることながら、その展開がとても魅力的。ラストまでの